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年金問題のまとめ

kage

2012/09/29 (Sat)

昨日、厚生労働省がAIJ投資顧問事件を受けて厚生年金基金の制度を廃止する方針を固めたと報じられました。下記はその中のひとつである読売新聞の報道です。

厚生年金基金、廃止の方針決定…財政再建は困難

厚生労働省は28日の厚生年金基金特別対策本部(本部長・辻泰弘厚労副大臣)の会合で、AIJ投資顧問の年金資産消失問題に関連し、企業年金の一種である厚生年金基金制度を廃止する方針を決定した。

年内に改革案をまとめた上で来年の通常国会に関連法案の提出を目指す。運用利回りの悪化などで、基金が公的年金の一部を国に代わって運用する「代行部分」の積立金の不足額が1兆1100億円に達したことから、財政の立て直しは困難と判断した。(読売新聞より)


AIJ投資顧問が巨額の運用損失を隠していたことは悪質であり決して許されないことなのですが、すべての責任をAIJ投資顧問にだけ押し付けるのはちょっと不公平なような気がします。

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AIJ投資顧問事件が起こった背景については、半年前に一度こちらのエントリーで触れていますが、厚生年金の想定運用利回りがいまだに5.5%という現在の投資環境では達成困難な水準に据え置かれているため、その一部を代行して運用している厚生年金基金がいわゆる「代行割れ」(運用利回りが5.5%を下回ること)を起こして、上記記事にあるような積立金の不足額が積み上がってしまったことがまず大前提にあります。なぜ想定運用利回りが5.5%に据え置かれているかというと、年金が「100年安心」であるために計算上必要だからです。これは現実より建前を大切にする本末転倒の典型ですね。

バブル全盛期には運用利回り5.5%など楽勝でクリアできましたので厚生年金の代行運用は厚生年金基金にとって極めて「おいしい」選択肢でした(想定利回りを上回った分は自分のものになるので)。しかしバブル崩壊以降、5.5%のクリアは年々難しくなるばかりです。そこで大手企業の厚生年金基金は相次いで厚生年金の代行運用部分を国に返上する「代行返上」に踏み切りました。ただし代行返上にはそれまでの積立金の不足額(=想定運用益の不足分)を企業が補填して国に支払う必要があったため、資金面で余裕のない中小企業はズルズルと代行運用を続けることになったわけです。

このような背景があったからこそ、中小企業の厚生年金基金担当者は「溺れる者は藁をもつかむ」の心境で毎月安定的な利回りを確保していると称するAIJ投資顧問に、何となくおかしいと思いながらも、運用を任せてしまったのです。もちろん一番悪いのは運用損失を隠していたAIJ投資顧問であり、その運用成績が怪しいと思いながらも資金を引き揚げなかった厚生年金基金担当者にもそれなりの責任はあります。しかしこの問題の本質はやはり想定運用利回りがいまだに5.5%に据え置かれていることであると私は思います。つまり厚生労働省にも大きな責任があるということです。

報道によると厚生労働省は厚生年金基金の解散を容易にするために、積立金の不足分の一部免除を考えているようです。しかしその不足分は一体誰が埋めることになるのでしょうか?もし厚生年金が負担するのであれば、厚生年金基金に加入していないサラリーマンも自分とは無関係の損失の穴埋めをさせられることになります。もし税金で補填することになれば全国民の負担となります。果たしてこれからどういう決着に至るのか?私たちは監視の目を光らせ続けなければなりませんね。

話は前後してしまいますが、せっかくの機会なので厚生年金と厚生年金基金の違いについて触れておきましょう。下記は日本年金機構のサイトからお借りしてきた日本の年金制度の図です。

日本の年金

ご覧のとおり厚生年金の上に乗っているのが厚生年金基金です。2階の上に乗っているので「3階部分」とも呼ばれます。厚生年金基金は企業が独自に提供している社会保障制度であるため、本来なら想定運用利回りは個々が独自に決めれば良いのです。すなわち労使が合意しさえすれば1%でも2%でも構わないのです。しかし今回問題となったのはその下に食い込んでいる「代行部分」です。これは国に代わって厚生年金の一部を代行運用しているため強制的に5.5%が適用されます。そしてその運用利回りが達成できなかった分は積立不足となり、厚生年金基金が補填することになるわけです(もっとも、実際には企業が負担することになるのですが)。

言うまでもなく日本の年金制度の問題の根本は、少子高齢化が進行して現役世代がリタイア世代を支えるという仕組み自体が崩壊していることです。加えて先に述べた「想定運用利回り5.5%がいまだに維持されている」というような個々の問題があちらこちらに見られます。以下に私の記憶を頼りに年金の問題点を列挙してみます。

・自営業者など(第1号被保険者)の国民年金保険料未納分をサラリーマンなど(第2号被保険者)が加入する厚生年金が補填していること。

・サラリーマン(第2号被保険者)に扶養される配偶者(第3号被保険者)は国民年金保険料の納付が免除されているが、それを厚生年金の他の加入者(独身者や配偶者を扶養していない加入者)が負担していること。

・公務員が加入する共済年金の職域相当部分(厚生年金基金と同じく3階部分に相当)に税金が投入されていること(そこまで手厚くする必要があるのか?)。

・国民年金の支給額(満額)より生活保護の支給額が多い。

・公務員が加入する共済年金の運用はなぜか国内債券中心で極めてディフェンシブ。厚生年金の運用とは大違い。

このように日本の年金制度には私の記憶に残っているものだけでもこれだけの問題点があります。これらを解決するためには抜本的な改革が必要であることは誰もが分かっているはずです。現実には誰の痛みも伴わない理想的な解決策など存在しないことも誰もが知っています。これからは私たち一人ひとりが、日本の年金の将来と真剣に向き合うことが求められます。



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