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侮ってはいけない国内債券

kage

2012/07/29 (Sun)

前回のエントリーで私は「スペインの10年国債利回り(=長期金利)は自力で資金調達が困難になるとされる危険水域7%を超えて、昨日は一時ユーロ導入後の最悪の7.596%にまで上昇しました(=国債本体の価格は下落)。マーケットはこれを嫌気して再びリスク・オフの動きが強まり、株が売られて円(日本国債)やドル(米国債)が買われました。」と書きました。つまりスペイン国債は売られ、国債価格は下落、金利は上昇しました。逆に米国債や日本国債は買われ、国債価格は上昇、金利は低下したわけです。(このあたりの仕組みについては以前「金利が上がるとなぜ債券価格は下がるのか」で触れていますのでよろしければご参照ください。)

10年もの国債の利回りを一般的に「長期金利」と呼びます。短期金利は日銀・FRB・ECBなどの中央銀行が金融政策によりある一定の水準に誘導することが可能ですが、長期金利は基本的に債券市場の売買で決まります(=マーケットが決める)。今回の欧州債務危機再燃を背景にしたリスクオフの高まりにより日本国債や米国債が買われた結果、日本10年国債利回りは7月23日(月)には約9年ぶりの低水準となる0.72%にまで低下し、米国10年債利回りは同じ日に1.44%を割り込み、過去最低水準にまで低下しました。

先にも触れたとおり、日本の長期金利が低下しているということは、すなわち国債の価格が上昇していることを意味します。下記は代表的なインデックスファンドの中でも古株である「年金積立インデックスファンド国内債券」の10年チャートです(いつものようにYahoo!ファイナンスからお借りしました)。これを見れば国内債券の値上がりが一目瞭然です。

年金積立インデックスファンド日本債券

公的年金の運用成績が2年ぶりにプラス転換」で私は、個人の資産運用における国内債券の扱い方に関して以下のように書きました。

個人の資産運用においては国内債券クラスを定期預金や個人向け国債で代替する手法もありますが、定期預金や個人向け国債で得られるのは利息(インカムゲイン)のみで、債券本体の値上がり益(キャピタルゲイン)は放棄することになります。もちろんこれは値下がり損(キャピタルロス)のリスクを負わないメリットと表裏一体ではあるのですが、昨年度は結果的にキャピタルゲインの差が大きくなっていたという事実はキチンと認識しておくべきだと思います。


実は定期預金や個人向け国債には、キャピタルゲインを享受できないこと以外にも大きなデメリットがあります。それは利息に対する課税が「利子所得」として20%源泉徴収される(利息の支払いから差し引かれる)ことです。これに対して国内債券型の投資信託であれば、(期間限定ではありますが)適用される税率は10%に軽減されています。しかも利息が出るたびに強制的に徴税される定期預金や個人向け国債と異なり、投資信託であれば利益を確定するまでは課税されません。値上がり益に比べると利息の額は微々たるものですが、国内債券型投資信託はここ数年間に渡って、長期投資家が理想とする「複利の効果(利子がまた新たな利子を生む)」を最大限発揮し続けてきたことは確かです。

ところで、投資対象が同じ国債なのに、なぜ個人向け国債と国内債券型投資信託では税率が異なるのでしょうか?当ブログをご訪問いただいているのは投資に関心がある方ばかりなのですでにご承知のこととは思いますが、投資初心者の方のために蛇足ながらその理由をご説明しておきます。

その理由とはズバリ、国内債券型投資信託が株式の組み入れを可能にしているからです。ですから株式と同じ10%の軽減税率が適用されるわけです。論より証拠で下記の記述をご覧ください。これはeMAXIS国内債券インデックス請求目論見書に書かれた信託約款の一部です。

eMAXIS国内債券インデックス請求目論見書

ご覧のとおり、一番最初に「株券」と書かれていますね。それではeMAXIS国内債券インデックスが実際に株式を組み入れているのかといえば、もちろんそんなことはありません。下記は6月末時点のeMAXIS国内債券インデックス種類別組入比率です。

eMAXIS国内債券インデックス種類別組入比率

ご覧のとおり、組み入れられているのはすべて債券です。ちなみにMBS(Mortgage Backed Securities)とは不動産担保証券のことで、ABS(Asset Backed Securities)とは資産担保証券のことです。このように実際に株式が組み入れられていなくても株式の組入を可能にしていれば10%の軽減税率が適用されるのです。これはグローバルソブリンオープン(グロソブ)を始めとする他の債券型投資信託も同様です。

さて、話を元に戻して日本国債が運用成績に実際に影響を与えた事例を見てみましょう。下記は当ブログでは過去に何度も掲載しているセゾンバンガード・グローバルバランスファンドと世界経済インデックスファンドの過去1年間の比較チャートです。

セゾンVGBF vs 世界経済IF

青:セゾンバンガード・グローバルバランスファンド
赤:世界経済インデックスファンド

ご覧のとおり、この1年ではセゾンバンガード・グローバルバランスファンドが勝っています。ちなみに昨年5月下旬の比較では世界経済インデックスファンドの圧勝でした。運用成績が逆転した理由はいくつもあると思いますが、国内債券の組入比率の違いがそのひとつであることはおそらく間違いないでしょう。

ご参考までに6月末時点の両ファンドの各資産別の組入比率の比較をご紹介しておきます。昨年5月下旬の比較と見比べてみると、世界経済の中身の変化が垣間見えるようで興味深いです。

 国内株国内債海外株海外債新興株新興債その他
セゾンVGBF4.111.538.938.26.50.9
世界経済IF4.84.830.930.513.715.20.7

莫大な借金を抱えて少子高齢化が急速に進行する日本の国債の今後には暗雲が立ちこめているという意見もよく聞きます。私自身も正直なところ不安を感じています。そこで最後に以前こちらのセミナーレポートでご紹介したセゾン投信・中野社長のコメントを再掲して本エントリーの締め括りとさせていただきたいと思います。

中野:日本国債は低金利なのに金利上昇(本体価格下落)のリスクが高くてとても買えないという声はずいぶん以前からあった。でも結果的に日本国債保有者は損をしていない。プロでも結果は読めない。




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