麻生総理の「株屋は信用されない」発言を検証する

2009/03/22 (Sun)
この報道を聞いて私がまず疑問に思ったのは「株屋」が証券会社を指しているのか投資家を指しているのかという点でした。そこでいろいろなニュースサイトで発言の前後関係を調べてみたのですが例えばNHKの下記の報道を見てもどちらとも取れる表現で疑問は増すばかりでした。麻生総理大臣が有識者からの意見を聞く会合は、最終日の21日、午前中、社会保障と金融の2つをテーマに開かれました。このうち金融問題の会合で、松井証券の松井道夫社長が「先進国の株式市場の中で、日本だけが、外国人がメインプレーヤーになっており、税制などで『株式は悪だ』という雰囲気をふっしょくする具体的な対応が必要だ」と指摘しました。これに対し、麻生総理大臣は「まったく賛成だが、やっぱり『株屋』というのは信用されていない。『株をやっている』と言ったら、田舎では何となく怪しげだ。『貯金しているが、株をやっている』と言ったら、今でも何となくまゆにつばつけて見られるようなところがある。僕たちの田舎ではまちがいなくそうだ」と発言しました。政府は、個人の貯蓄を投資へ振り向ける株式市場の活性化策を進めており、麻生総理大臣の発言はこれに逆行するものと受け取られかねず、今後、波紋を広げる可能性もあります。松井社長は会合のあと記者団に対し、「世間一般の人たちの株に対する意識を表現されたと思う。そんなに深い意味はないと思う」と述べました。一方、日本証券業協会の安東俊夫会長は「日本は、そういうとらえ方をしている方が多いのは事実だから、麻生総理大臣もそういうことばを使ったんだと思う。あえて反論はしないが、好ましいことではない」と述べました。(NHKより)
このNHKのページでは動画も公開しており、その中で麻生総理が実際に「株屋」発言を行った場面が紹介されていました。その時のテロップに「政府インターネットテレビより」とあったためそれを頼りに調べてみたところ、政府インターネットテレビのこちらのページで今回の発言の前後関係がすべて公開されていることが分かりました(46分30秒あたりからが問題の部分です)。
「株屋」発言につながる一連の議論は麻生総理の「東証の株式市場の閉鎖性を参加している人はどうして言わないのか?言いにくい?いじめられるから?」という大変興味深い質問から始まっています。これに対して日本証券業協会会長の安東俊夫氏は「そんなことは決してありません」と否定しますが麻生総理は「だって極端でしょう日本の場合。ニューヨークで何百社?日本で20社くらい?異常と思いません?」とたたみかけます。この数字から想像するとこれは上場している外国企業を指しているようです。しかし安東会長の回答は「減ったとはいえ外国人投資家の売買シェアは50%を超えており閉鎖性という言葉がどういう観点から出てきたのか分からない」というかみ合わないものでした。しかし総理は「でも資料はすべて日本語だったんじゃなかったっけ?」と問題の核心を突き、ゴールドマン・サックス証券株式会社取締役会長の足助明郎氏に意見を求めます。足助氏は「資料が日本語というのが最大のネックだったが最近は金融庁も含めて英語でも受け入れてもらえるようになっており改善が進んでいる」とフォローします。さらに足助氏は日本の会計基準が海外と異なっていて手間がかかることを問題点として挙げ、日本に上場する海外企業は減る一方であると述べます。しかし海外企業が上場しにくいという閉鎖性と海外投資家が参加しにくいという閉鎖性はまったく別問題であるとも指摘されました。ここで松井証券株式会社代表取締役社長の松井道夫氏が「どの国も個人の資金を株式市場に呼び込むことが当たり前になっているのに日本だけが…」と発言を始めて、冒頭に紹介したNHKの記事にある発言につながって行きます。
実際に「株屋」発言の前後をすべて視聴してみて私は麻生総理のいう「株屋」はおそらく証券会社を指しているのだろうなと思いました。しかしそこに短期的な利益を狙うヘッジファンドや私のようなハイリスク投機家などの投資家を含めて「株屋」と捉えて、「株をやっている」と言ったら、田舎では何となく怪しげだという感覚が日本では一般的になってしまっている責任が「株屋」にはあると反省すべきなのではないかと私は考えます。現実に今回の金融危機は怪しげな手法を駆使して暴利を貪ろうとした欧米の「株屋」が元凶ですし、日本の証券会社だって真摯に顧客のことを考えてビジネスを行ってきたかと問われれば胸を張って「Yes」とは答えられないのが現実であると思います。そして結果的に日本には長期投資の思想が根付かず、株式市場では短期的な利益を追求する投機家の存在感が増し、企業も四半期ごとの業績を上げることを重要視して徹底的な合理化や効率化を追求することになり、従業員の給料は上がらず非正規雇用は容赦なくカットされるという現状を生むことになりました。
麻生総理の「株屋」発言を批判することは簡単です。しかし株屋が信用されないのはなぜなのか?株屋が信用されないと私たちにどのような弊害があるのか?株屋が信用されるようになるにはどうすれば良いのか?を考える方がより建設的であり、私たちのためになると考えます。
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