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REITファンドの利回りが30%?

kage

2009/03/10 (Tue)

本日、SBI証券のサイトにログインしたところ「REITファンドの平均分配金利回り約30.1%」という衝撃的なキャッチコピーが書かれた下記のバナー広告が目に飛び込んで来ました。金融危機の影響でREITの評価額が急落し、相対的に利回りが急上昇している事実は私も知っていましたが、いつの間に30%を超えたのでしょうか?

REITFUNDS

半信半疑でこのバナーからリンクが貼られた「なぜグローバルREITファンドが売れている!?」を開いて内容を確認してみると、この超高利回りのカラクリはすぐに分かりました。

上記リンク先のページには残高上位のグローバルREITファンド5本が列挙され、それぞれの基準価額、過去1年間の分配金合計額、年分配金利回りが並記されています。その利回りは2割3割は当たり前という景気の良い数字が並んでいます。そしてこのカラクリの正体は欄外に書かれた下記の注にありました。

※年分配金利回りは過去1年間の分配金累計金額を3/6現在の基準価格(1万口当たり)で除して計算。

つまり一覧表にある「過去1年間の分配金合計額÷基準価額=年分配金利回り」という計算式で算出しているわけですが、ここにはとんでもないトラップが隠れています。それは1年前に購入した人にとっては「過去1年間の分配金合計額」の大部分が運用益ではない特別分配金であるという点です。

それではまずここで普通分配金と特別分配金の違いについておさらいしておきましょう。それぞれの性格を理解しやすくするために下記のような3つのケースで考えてみましょう。なお分かりやすくするためにすべて設定時に基準価額10,000円で買い付けたものとし、手数料は一切ないものとします。

【ケース1】
基準価額10,000円の投信を買い、1年後に基準価額は12,000円になり、1,000円の分配金が出て基準価額は11,000円となった。

2,000円の運用益から1,000円の分配金が出ているのでこの分配金は「普通分配金」として所得税(配当所得)の課税対象となる。配当落ち後の基準価額11,000円は元本10,000円+運用益1,000円である。

【ケース2】
基準価額10,000円の投信を買い、1年後に基準価額は10,000円のままだったが、1,000円の分配金が出て基準価額は9,000円となった。

このケースでは運用益は出ていないので元本から1,000円を取り崩して返却してもらったことになり、この分配金は「特別分配金」として非課税扱いとなる(=利益ではないので税金はかからない)。配当落ち後の基準価額9,000円は元本のみである。

【ケース3】
基準価額10,000円の投信を買い、1年後に基準価額は10,500円になり、1,000円の分配金が出て基準価額は9,500円となった。

運用益は500円しかないのに1,000円の分配金を出しているので足りない500円分は元本を取り崩して返却してもらったことになる。つまりこの場合は普通分配金500円+特別分配金500円となり、普通分配金の部分のみ課税対象となる。配当落ち後の9,500円は元本のみである。

上記リンクにある5つのグローバルREITファンドはいずれも金融危機の直撃を受けてこの1年の運用成績はほぼ右肩下がりですので上記の例に合わせて表現すれば以下のようになります。

【グローバルREITファンドのケース】
基準価額10,000円の投信を買ったが金融危機の影響で1年後の基準価額は5,000円に激減。それでも1,000円の分配金が出て基準価額は4,000円となった。

この1,000円は半分に減ってしまった元本を取り崩して支払われたもので当然のことながら特別分配金となる。配当落ち後の4,000円は元本のみである。

以上の説明でお分かりのとおり、特別分配金は運用益ではなく自分が預けたお金を返してもらっているだけなのでこれを利回りの計算に入れてしまうのははなはだ不都合です。もしそれが許されるのであれば、残金12,000円の銀行口座から毎月500円ずつ引き出して1年後に残金が6,000円になった状態を「引き出し額の合計6,000円÷残金6,000円=引き出し金利回り100%」と表現することが可能になってしまいます。このように特別分配金は銀行に預けた自分のお金を返してもらっているのと同じですのでこれを利回り計算に用いるのは反則であると思います。また基準価額が3千円台以下に落ち込んでしまっては物理的に多額の分配金を出し続けることは不可能であるにも関わらず分配金の多さをアピールするのは無責任であると感じます。

私自身SBI証券には何かとお世話になっておりそれなりに愛着もあるのですが今回の説明はいただけません。顧客の不信感が増大する前にぜひ見直しをお願いしたいところです。



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この記事へのコメント

kage

こんばんは。
私もこの広告はさすがに酷いなと思っていました。
投資家の自己責任と言ってしまえばそれまでですが、顧客をだまし討ちにするようなやり方は、長期的にはSBI証券にとっても良いことが無いですよね。

Posted at 22:31:20 2009/03/10 by じゅん@

この記事へのコメント

kage

じゅん@さん

コメントありがとうございます。

金融危機の影響で業界トップのSBI証券といえども手段を選ばず販促に努めなければならないということなのでしょうか?でもこの問題に気付いていないとしたらあまりにもお粗末ですし、分かってやっているのならあまりに悪質であると感じます。

Posted at 00:09:51 2009/03/11 by おやじダンサー

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kage

特別分配金の定義

初めまして、rennyさんのところから来ました。

分配金だけに注目するのではなく基準価格の推移も含めて判断すべし、
という点は同感ですが、
> 運用益ではない特別分配金であるという点です。
は少々誤解を招くと思います。

ケース4
基準価格10,000円で運用を開始し、1年間順調に運用して基準価額が12,000円になったところで投信を買い、翌日2,000円の分配金が出て基準価格は10,000円になった。

このケースでは、12,000円で買った人にとっては元本の取り崩しでもあり非課税の特別分配金になりますが、ファンドマネージャとしてはあくまで運用益を分配したに過ぎません。

一般論として、10,000円で買った人にとっても、将来起こりえる基準価格の下落による損と今回の分配金を相殺できないので分配して欲しくない、とは思いますが。

おやじダンサーさんの趣旨を伝えるには
「前回の決算後から今回の決算直前までの間に基準価格が下がっているにも関わらず支払われた分配金」を「運用益ではない」と仰れば良いかと思います。

Posted at 09:48:27 2009/03/20 by COLE

この記事へのコメント

kage

COLEさん

コメントありがとうございます。

ご指摘のとおり確かに個別元本は人によって異なりますのである人にとっては特別分配金でも他の人にとっては普通分配金になることがあります。そこですべての顧客が同じ条件で買い付ける投信設定時をイメージして基準価額10,000円で購入という例を挙げたのですが素直にそう書いておけば良かったですね(早速本文に追加しました)。

難しいのは「前回の決算後から今回の決算直前までの間に基準価格が下がっているにも関わらず支払われた分配金は運用益ではない」という表現も必ずしも正しいとはいえないところで、もし今回比較されているREIT投信を1年前に買ったとしたら最初の2-3カ月の分配金は運用益から支払われた普通分配金となりますので。ただし大筋においてはCOLEさんのおっしゃるとおりで、運用成績がずっと右肩下がり(マイナス)で運用益とはいえない分配金を捉えて「利回り」と表現することが不適切であると私は言いたかったのです。

なおCOLEさんが示されたケース4の事例(分配金が欲しいために決算直前に買う)は初心者が陥りやすい罠といえます。この件については2年以上前に書いた下記のエントリーで触れています(「おまけ」というところに書いています)。

http://oyajidancer.blog22.fc2.com/blog-entry-168.html

Posted at 12:20:28 2009/03/20 by おやじダンサー

この記事へのコメント

kage

ご返事ありがとうございます

分配金に目が行ってしまうのは良くあることのよう、というか、私の母も銀行員に勧められて外国REITに投資する投信を2年くらい前に買ってました。
私:危ないからすぐ売りなさい。
母:買うときに手数料も払ったし、分配金はちゃんと出ているし…
で、解約までにかなり大喧嘩しました。

分配金に着目=安定的な収益を目指した「健全な投資」
基準価格に着目=値動きを狙った「危ない投機」
という印象もあるようです。

売る側としては「顧客に儲けてもらおう」より「顧客に売りつけよう」と考えてきますので、多くの人の心理も絡んできて、色々考えることが多い問題だと思います。
RSSリーダーに登録しましたので、これからも寄らせていただきます。

Posted at 23:57:27 2009/03/20 by COLE

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kage

COLEさん

重ねてのコメント、誠にありがとうございます。

このようなエントリーを立てている私は毎月分配型投信に否定的な考えを持っていると思われるかも知れませんが、実はそうでもありません。ありがとう投信が提供しているライフサポートサービス(定期売却サービス)のようにその主旨を正しく理解して活用するのであれば年金の補完目的としての存在意義はあると考えています。しかし現在の販売会社のスタンスは悲しいかなCOLEさんのおっしゃるとおり金融危機の影響で激減した売買手数料を埋め合わせるために安定的に確保できる投信の信託報酬を狙って何とか新たな投信を顧客に売り付けようとするものが目立ちます。未曾有の金融危機の影響で今はどの証券会社も苦しいことは理解していますが顧客の信頼を失っては元も子もないことに気付いて欲しいものです。

ハイリスク投機家の戯れ言を書き連ねた当ブログですが、今後も忌憚のないご意見をお聞かせいただければ幸いです。

Posted at 01:31:02 2009/03/21 by おやじダンサー

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kage

同感です

初めまして、リンク先から参りました。
私もこの広告を見て酷いなと思いました。
おやじダンサーさんがカラクリをわかりやすく書かれていてだまされる人が少しでも少なくなればと思います。
SBI証券はSTAMインデックスシリーズがあるので基本的に好きな証券会社ですのでなおさら残念です。

Posted at 12:45:25 2009/03/21 by kenz

この記事へのコメント

kage

kenzさん

コメントありがとうございます。

SBI証券の投資信託週間販売金額ランキングを見るとこの販促企画で紹介されたREITファンドが実際に売れているのが現実です。そしてもしここから世界経済が回復に向かって良い結果が得られたとしたら、顧客は今回の問題点に気付かないままかも知れません。

私は日本の電器製品や自動車が世界トップレベルの品質を達成できたのは消費者の厳しい目で評価されて企業が切磋琢磨を続けた結果であると考えています。つまり金融商品についても結局は私たち一人ひとりが金融リテラシーを高めて賢い選択をしないと今回のような問題は絶えることはないのだと思っています。

Posted at 22:28:40 2009/03/21 by おやじダンサー

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kage

はじめまして

はじめまして。マックンと申します。
「REITの時代がキタ!」と一瞬だけ思いました。
罠ですね。恐ろしい。
SBI証券を愛用している自分としては残念です・・・
そういえば、吉本 佳生さんの「金融広告を読め」を思い出しました。
本書で物事を分析する事の重要性を学びましたが、
今回の記事も同じくらい勉強になりました。
それでは。

Posted at 14:41:40 2009/03/27 by マックン

この記事へのコメント

kage

マックンさん

コメントありがとうございます。

本日(3/27)時点でこのREIT販促ページを見ると3/19時点の基準価額で計算し直して「平均分配金利回り約21.1%」に修正されています。たった2週間足らずで利回りが一気に9%も低下してしまうのもこの計算式に無理があるためです。SBI証券には2週間前に利回り30%を信じて購入した顧客がこの状況を見てどう思うかを考えて欲しいものです。

Posted at 23:42:18 2009/03/27 by おやじダンサー

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kage


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