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ETF乗り換え時に注意すべきこと

kage

2008/11/14 (Fri)

圧倒的な低コストが魅力のバンガード社のETFが充実してきたため既存のETFやインデックス・ファンドからの乗り換えを検討されている個人投資家の皆さんも多いと思います。しかしもし現在保有しているETFや投資信託を売却してバンガード社のETFに乗り換えようとお考えなのであれば税金の扱いにご注意ください。こう書くと「今年は金融危機の直撃を受けて利益は出ていないから税金は関係ないよ」と言われる方もいらっしゃるかも知れません。しかし含み損を抱えている状態からの乗り換えこそ長期運用の観点では大きなデメリットとなる可能性を秘めているため注意が必要なのです。

それではまず含み益があるETFや投資信託からの乗り換えでは税金の扱いがどうなるのかを考えてみましょう。この場合の計算は簡単で、保有しているETFや投資信託の売却時に発生した譲渡益の10%が税金になります。つまりリレー時に運用資産が税金分目減りすることになるため複利の効果がそれだけ薄れることが長期運用の観点からはデメリットとなります。ただもし保有資産に余裕があるのであれば課税で目減りした分を待機資金から補填すれば複利効果を損ねることはありません。そもそもリレー時の課税とは本来ならリタイア後に資産を取り崩す際に払うべき税金を前倒しして払っていることになるため、結局は納税するのが早いか遅いかだけの違いに過ぎず、特に大きな問題はないと考えることもできます。

ところが含み損があるETFや投資信託からの乗り換えは一筋縄ではいきません。「含み損がある=売却しても譲渡益は発生しない」ですからリレー時に税金は発生しませんので、この場合は複利の効果が薄れる心配はまったくありません。ここで大問題となるのは売却時に損失が確定することです。もし含み損を抱えたETFや投資信託をそのまま保有していれば含み損が消えるまでは売却しても譲渡益が発生しませんので税金がかかることはありません。しかしここで含み損を抱えたETFや投資信託を売却して新しいETFに乗り換えれば、含み損は今年の譲渡損失として確定し、乗り換え先のETFはまた新たにプラスマイナスゼロからのスタートになります。実はこの「損失が確定する」ことが長期運用の観点では大問題なのです。

現行の証券税制では譲渡損失を確定申告すれば翌年以降最大3年まで繰り越すことが可能です。つまり翌年以降最大3年の間に発生した譲渡益は繰越損失と相殺できるため、例えば今年100万円の譲渡損失を繰り越して来年の譲渡所得が100万円であれば税金はゼロという計算になります。しかしこの権利は3年で消滅するわけです。長期運用の観点では乗り換え先のETFの利益を確定するのは3年後よりずっと先になるはずなのでこれは由々しき問題です。つまりもしリレー投資で損失を確定するのであれば翌年以降3年間で新たに発生する譲渡益と相殺できる範囲でなければ結果的に余計な税金を納めることになりかねませんので注意が必要です(なお来年からは配当金や分配金も繰越損失と相殺できます)。

また譲渡損失の繰り越しには確定申告が必須となりますですので、「独立系投信は長期投資に向いていない?」で書いたような確定申告不要を選択しない際のデメリットが発生することにも注意が必要です。ちなみに今年の大幅マイナスに懲りて来年は一切の投資・運用活動を行わない場合でも譲渡損失を翌々年に繰り越すためには来年も確定申告が必要になります。つまり譲渡損失を繰り越している限りは確定申告不要を選択しないデメリット甘受する覚悟が必要となるわけです。

それでは今年100万円の損失を繰り越して来年200万円の利益が出た場合はどうなるのでしょうか?これは200万円から100万円を相殺した残りの100万円にだけ課税されることになります。しかし当然のことながらこの場合は100万円の所得を確定申告することになりますので、扶養家族に入っている人にとっては扶養家族から外れる心配が出てきますし、自営業や年金生活の人にとっては国民健康保険料が跳ね上がる弊害が出てきます。しかしこれは来年も現行の証券優遇税制が継続するという前提であれば、あらかじめ別々の証券会社に源泉徴収なし(=確定申告あり)と源泉徴収ありの特定口座を開設しておいて、繰り越し損失が消えるまでは源泉徴収なし(=確定申告あり)の特定口座を使い、繰り越し損失が解消した後は源泉徴収ありの特定口座を使うというテクニックで回避が可能です。

【訂正】扶養家族の判定には繰り越した損失を相殺する前の「合計所得金額」が用いられるため、上記の例では100万円の申告により基礎控除の38万円を超えてしまい扶養を外れてしまいます。従ってこの方法では扶養家族から外れることを回避できません。誤った情報を公開してしまったことを謹んでお詫びしますとともに、ご指摘いただいたnetsuheroさんに厚く御礼申し上げます。

あと細かい点ですが「損失の繰り越しは翌年以降3年まで」ですから、もし今年中に損失を確定してしまえばその損失を繰り越せるのは2011年までとなります。つまり現時点がすでに年末に近いという状況をを考えればリレーするのをあと1カ月半我慢して来年1月に実施すれば繰り越し期限が2012年に伸びるわけです。現在の情報では証券優遇税制の延長は3年説が有力ですので2012年にはまた何らかの優遇縮小措置が取られると考えられます。つまり2011年までは10%との相殺権に過ぎない繰り越し損失が2012年には20%との相殺権となる可能性もあるわけでこれは無視できません。

現実問題として大きな損失を取り戻すことは簡単ではありませんので、無理な乗り換えをして節約したコスト以上を吹き飛ばしてしまうことがないように十分にご注意ください。

【ご注意】上記内容につきましては私自身十分に調査したつもりですが実際の課税のご判断については念のため税務署や税理士などにご確認ください。



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この記事へのコメント

kage

勉強になりました。
今年から、一つの証券会社で源泉徴収あり(=確定申告なし)で個別株を買いました。
この暴落で損失を確定したのですが、この損失を繰り越して来年以降の譲渡益と相殺するには、源泉徴収なし(=確定申告あり)の特定口座に変更する必要があるのでしょうか。
それとも同一の証券会社で続ける限りは、このままでも大丈夫なのでしょうか?

Posted at 20:17:57 2008/11/14 by 初心者M

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kage

初心者Mさん

ご質問ありがとうございます。

源泉徴収あり(=確定申告なし)の特定口座の取引は確定申告なしで済ませることができますが、実際に確定申告をするしないは個人の自由です。従って譲渡損失を繰り越す際には確定申告することになります。翌年もこの原則はまったく同じですので源泉徴収あり(=確定申告なし)のまま確定申告すれば良いことになります。ただし翌年は必ず確定申告することがあらかじめ分かっているのであれば源泉徴収なし(=確定申告あり)に変更しておけば税金が後払いになりますのでその分運用効率が上がることになり、少しお得です。

Posted at 20:52:29 2008/11/14 by おやじダンサー

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kage

非常にタイムリーな記事ですね。私来月にでもEEM売却してVWO購入しようと思ってました。しかも、猛烈な含み損を決済してしまう覚悟してです。
じっくり考えてから判断しないとダメですね。EEM持っているのも割高感を抱えているので精神衛生上よくないんですが、悩みます。

Posted at 22:30:02 2008/11/14 by 道産子

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kage

道産子さん

コメントありがとうございます。

大きな含み損も考え方を変えれば将来の貴重な節税カードとなりますので安易に手放してしまうのは得策とはいえません。一番確実なのは来年以降複数年に分けて年末にその年に計上できた運用益の分だけ損切りして乗り換える方法ですが、海外ETFの買付は回数を多くすればするほどコスト高となってしまうのが悩ましいところですね。

Posted at 23:26:41 2008/11/14 by おやじダンサー

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kage

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Posted at 23:19:24 2008/11/17 by

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kage

netsuheroさん

ご質問ありがとうございます。ご連絡先が分かりませんのでこちらでお答えさせていただきます。

まず単純に、ある年の取引でA証券の特定口座(源泉徴収あり)で100万円の利益があり、B証券の特定口座(源泉徴収なし)でも100万円の利益があったケースを考えてみましょう。この場合、確定申告が必要なのはB証券の100万円だけです。文中の説明は100万円の損失を繰り越した翌年にこれと同じ結果になったことを示しているわけで、この場合でも確定申告が必要なのはB証券の100万円だけとなります。

確定申告の要不要についてはカブドットコム証券の証券税制フローチャート(http://www.kabu.com/investment/syoukenzeisei/flowchart.asp)で詳しく説明されています。このフローチャートの一番下にある「源泉徴収あり以外の口座をすべて合算して確定申告」が上記の例に該当します。

Posted at 00:52:05 2008/11/18 by おやじダンサー

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kage

源泉徴収なしの特定口座だけで

早速のご回答をありがとうございます。
netsuheroです。

ご回答頂いた内容でしたら、きちんとした申告ですね。
変に気を回してしまいました。非表示にしていたことをご不快に思われていたらお詫びします。スミマセン。
不愉快な質問、指摘をした者にきちんと回答を頂き本当にありがとうございます。

さらに失礼を重ねますが、少し指摘をさせてください(本当にごめんなさい。)
実は上記の方法は気がついていたのですが、この方法では、「被扶養者」は否認されてしまうため、文中の「被扶養者の否認を回避」するには当たらないと思い、先の質問で書いた「申告忌避」かと勘違いしていました。質問の中でちゃんと触れていれば良かったですね。

といいますのが、
国保料(税)の賦課の基礎となることが多い「旧ただし書き所得」は損益通算後の所得を使いますので、ご説明頂いた方法で申告をすれば、多くの市区町村でも保険料(税)に反映することはありません。
「市町村税」方式等でも同様です。

ところが、被扶養者認定の基礎となるのは、『損益通算前の所得である「合計所得金額」なのです。例示された方の「合計所得金額」は損益通算前の「100万円」なのです。そのため、被扶養者としては否認されてしまいます。

例示された事例では、損益通算を行うと被扶養者は否認されてしまうのです。

このことは、知られていないので注意が必要なのです。

もしかして、また私が勘違いをして、コメントを重ねているかもしれません。その時は、またご指摘ください。宜しくお願いします。

Posted at 21:24:46 2008/11/18 by netsuhero

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kage

すみません、訂正です。

上記のコメントを訂正させてください。

『損益通算前の所得である「合計所得金額」』ではなく

『譲渡損失の繰越控除の適用前の所得である「合計所得金額」』でした。

文中の「損益通算」も同様に「譲渡損失の繰越控除の適用」に読み替えてください。

重ね重ねすみません。

Posted at 21:30:04 2008/11/18 by netsuhero

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kage

netsuheroさん

お返事ありがとうございます。

扶養家族について再度確認してみたところ、ご指摘のとおり損失を相殺する前の「合計所得金額」で判定されるとのことでした。間違った情報を公開してしまいお恥ずかしい限りです。エントリーの内容は早速訂正いたしました。

今回の件で改めて日本の税制が複雑怪奇であることを痛感しました。しかし「知りませんでした」では損をするばかりですから勉強して自己防衛に努めるしかありませんね。

わざわざのご指摘、本当にありがとうございました。また何かお気づきの点がありましたらぜひご指摘ください。

Posted at 23:52:36 2008/11/18 by おやじダンサー

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kage

無礼なコメントに、丁寧な対応をありがとうございます

おやじダンサー様、netsuheroです。

申告忌避を助長してると決め込んで、失礼なコメントを入れた者に丁寧な対応をして頂き、本当にありがとうございます。

本当に、税制は複雑ですよね。
にも拘わらず、法律上はすべての人が理解している前提で動いているんですよね。

国税だけでも大変なのに、地方税、またそれを根拠にした各種福祉施策など、はたまた非表示でコメントしたように各制度の運用上の特性・・・・。
うんざりするのですが、税制上は知らないことで保護されることは少ないですよね。
知らない=知ってて利用していない、と見なされてしまいます。
もっと、強くならねば。と税に触れる度に思ってしまいます。

Posted at 19:49:35 2008/11/19 by netsuhero

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kage


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