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公定歩合と短期金利

kage

2008/03/23 (Sun)

私たちが構成する社会は絶え間なく動いており、変化していますので、小学校で学んだ常識が今では非常識となっている事例が数多く存在します。その中には特に私のようなおじさん世代にとって、知らない間に地動説が天動説に変わっているくらいのインパクトを受ける常識の変化も多々あります。よく知られた例では冥王星が惑星でなくなったことが挙げられます。子供のころ、ちょうど冥王星の軌道が海王星の内側に入って太陽系惑星の順番が変わるという経験をした私にとって、あの時の不思議なワクワク感は何だったのかとちょっと寂しくなります。また地理で学習した「火山帯」という概念も今は存在しません。火山活動や地震と密接に関係する地殻の変動は大陸プレートなどの広範囲の要因で起こるため、日本の火山を細かくグループ分けしても意味はないそうです。最近聞いた事例で驚いたのは「聖徳太子はいなかった」という事実です。聖徳太子のモデルとなった厩戸王は実在するらしいのですが、巷間伝えられる聖徳太子の逸話はほとんどが伝説と考える方が自然なのだそうです。そして今回のタイトルにある「公定歩合」も現在では私が学習した時とはその役割が大きく変化しています。それでは私たちの投資にも大きな影響を及ぼすことになる日銀の金利調整は、いったいどのように行われているのでしょうか?

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皆さんご承知のとおり公定歩合とは中央銀行(日本では日銀)が民間金融機関にお金を貸し出す際の金利を指します。私が小学校の社会の授業で学習した内容は「日銀の政策金利調整=公定歩合の調整」でした。つまり以前は、例えば日銀が政策金利を1%に決定したら公定歩合も1%に設定すれば良かったのです。しかし現在ではその仕組みは跡形もなく消え去っています。それは直近の利上げ報道の表現をご覧いただければご理解いただけると思います。

日本銀行は21日の金融政策決定会合で、短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を、現在の0.25%前後から0.5%前後に引き上げる事を決め、即日実施した。


ご覧のように現在日銀が調整しているのは公定歩合ではなく短期金利(無担保コール翌日物)です。さらにこれは「決定」ではなく、あくまでも「誘導目標」なのです。日本における短期金利は一般的に金融機関同士が資金を融通し合うインターバンク市場の翌日物金利を指します。私が投資の勉強を始めたころは日銀がどうやって金融機関同士が定める金利に介入できるのか不思議でした。まさか日銀が「今日から短期金利は0.5%に統一してください」と号令をかけて皆が従うとも思えませんし。

インターバンク市場の短期金利は当然のことながら需要と供給で決まります。市場にお金を貸したい金融機関が増えれば金利は下がります(ある商品を売りたい人が増えれば価格が下がるのと同じ理屈です)。逆にお金を借りたい金融機関が増えれば金利は上がります。実は日銀はその時々の金利動向に応じてインターバンク市場に資金を供給したり吸い上げたりしながら短期金利がおおむね0.5%に落ち着くように調整を行っているのです。つまり今では公定歩合はまったく出る幕がなくなってしまったのです。投資をしている皆さんなら現在の日本の政策金利が0.5%であることはご存じだと思います。それでは公定歩合はどのくらいかご存じでしょうか?正解は0.75%なのですが、このことからも公定歩合がいかに効力を失い有名無実化しているかがお分かりのことと思います。さらに付け加えるなら、厳密にはすでに日本に「公定歩合」は存在しないというからビックリです。ただしこれは日銀が「基準割引率および基準貸付利率」という名称に変更しているということで、かつての公定歩合が消えたわけではありませんので誤解のないようにお願いします。

ちなみに金融機関同士が短期資金を融通し合うインターバンク市場ではどのような性格の資金が取引されているかというと、「翌日物」という表記からも連想できるとおり翌日の営業に必要な資金です。つまり銀行でいえば本店と各支店で翌日の営業に必要な資金を計算して余っていれば貸し、足りなければ借りるという行動を繰り返しているのです。その意味でインターバンク市場における資金の調達は各金融機関にとっては非常に大切な意味を持ち、もし仮に翌日の営業に必要な資金を調達できなければお店を開けられない(=営業できない)という事態に陥ります。信用が第一の金融機関にとってそれは事実上の経営破綻を意味し、現実に北海道拓殖銀行が破綻した直接の理由はインターバンク市場で資金を調達できなかったことだったと言われています。

米国で日本の「無担保コール翌日物」に相当するのがフェデラル・ファンド・レート(Federal funds rate)です。フェデラル・ファンドとは米国の市中銀行が連邦準備銀行に積み立てを義務付けられている無利息の資金のことで、日本のインターバンク市場のように市中銀行同士が短期資金としてこれを融通し合っています。この取引の金利をフェデラル・ファンド・レート(FFレート)と呼び、もちろん米国においても政策金利の調整はこの金利を誘導することで行われます。米国では一連のサブプライムローン問題対策としてFF金利の利下げとは別に公定歩合の緊急利下げを2度行っていますが、これは「いざとなればFRBが低利で資金を供給しますよ」という姿勢を示す意味が大きいと思われます。実は証券大手ベア・スターンズが経営危機に陥った直接の理由も北海道拓殖銀行と同じで、短期市場で資金の調達ができなかったことにあったそうです。そこでJPモルガンがニューヨーク連銀から公定歩合で貸し出しを受けて、その資金をベア・スターンズに融資するという極めて異例の緊急措置が発動されたわけですが、やはり短期資金を調達できなかったことによる信用失墜は致命的で、最終的には限りなく経営破綻に近い形でJPモルガンに吸収合併されることとなりました。このことから現在では公定歩合による資金調達は使ってしまえば死に至るかも知れない究極の最後の手段と言えるかも知れませんね。

なお日銀はインターバンク市場における調整以外にも、市場で直接有価証券の売買を行ういわゆる公開市場操作による短期金利調整を行っています。日銀が市場から有価証券を買い入れて通貨を放出することを「買いオペレーション」と呼び、市場の通貨が増加することで金利引き下げの効果を生みます(ある商品の流通量が増えれば値下がりするのと同じ理屈です)。反対に日銀が保有する有価証券を市場で売却し通貨を回収することを「売りオペレーション」と呼び、市場から通貨が減少することで金利上昇の効果を生みます。ただしいずれにせよ日銀がコントロールできるのは短期金利だけであるという点には注意が必要です。もしこのまま国民の金融資産が減少を続け、国の借金が膨らみ続けると、必然的に国債価格暴落の危険性が高まります。国債が暴落すれば長期金利が跳ね上がることになりますが、おそらく日銀がどんな手段を使ったとしてもこれを抑えることはできないでしょう。また国債が暴落すれば強烈な円安も同時に進行すると思われますが、これも日銀がいくら円買い介入をしても止めることはできないでしょう。未来の日本が北海道拓殖銀行やベア・スターンズと同じ末路を辿らないよう、コントロールできる内に何とか的確な金融政策を打ち出していただきたいのですが、肝心の日銀総裁さえ決められないような国では不安が増大するばかりですね。



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