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「投資先進国」アメリカに学ぶ長期投資

kage

2007/11/20 (Tue)

ご報告がすっかり遅くなってしまいましたが、11月18日に虎ノ門で開催されたセゾン投信とバンガード・グループ共催の標記のセミナーに参加して参りましたので、私なりに印象に残った点をご紹介したいと思います。

実は誠にお恥ずかしい話なのですが、事前に地図を確認しておいたにも関わらず道に迷ってしまい、会場に到着したのは開演時間を15分ほど経過した後でした。ステージではすでに米国バンガード・グループのネイスン・ニューポート氏の講演が始まっていたのですが、驚いたのはニューポート氏の流暢な日本語でした。勝手に通訳を通しての講演を想定していただけに、良い意味で意表を突かれました。受付でいただいたプログラムを見ると、この前にセゾン投信社長の中野氏とバンガード・グループ駐日代表の加藤氏の主催者挨拶と、バンガード社を紹介するDVDの上映があったようです。ニューポート氏の講演が終わり休憩を挟んだ後のセミナーの後半は、ニューポート氏、主催者の中野社長、加藤代表にコーディネーターとしておなじみの藤沢久美氏を加えてのパネルディスカッションでした。合計3時間弱のセミナーでしたが、終わってみれば(私自身が遅刻したこともあるのでしょうが)短かったような印象を受けました。

今回のセミナーを通してのテーマは「資産形成には簡単で効果的な長期投資が最適」という表現でまとめることができたと思います。これはセゾン投信とバンガード・グループ共催のセミナーなのですからある意味当然のことですが、アクティブ運用派の私にとっても大変参考になる発見が多々ありました。それでは以下に私が今回のセミナーを通して印象に残った点を順不同でご紹介したいと思います。なお一部に私なりの意訳が含まれるため、発言者の本意と異なる可能性があることをあらかじめご了承下さい。

・1年間の運用成績ではアクティブファンドの約60%が市場の平均リターンを下回っている。50%にならないのは運用コストが高いため。

・米国の大型株アクティブファンドの20年間の運用成績を調べてみると約80%が市場平均に負けている。

・債券ファンドではこの傾向がさらに顕著で、米国の中期債券ファンドの10年の運用成績では約99%が市場平均に負けている(株式と比較して期待リターンが低い債券ファンドでは運用コストが重くのしかかるため)。

・インデックスファンドを上回る成績を残すアクティブファンドは確かにあるが長期的に好成績を残し続けたアクティブファンドはない。これに対してインデックスファンドは常にほぼ市場の平均リターンを確保できる。

・運用の世界では平均点を狙えばほぼそれは達成できる。しかし平均点以上を狙おうとすると必ずしもそうはならない。

・米国も日本も全ファンドに占めるインデックスファンドの割合は約10%で同等。ただし米国は増える傾向にあり、日本は減る傾向にある。

・米国では例え販売手数料が無料でも信託報酬の販売会社取り分が0.25%以上あればノーロードと呼んではいけない(日本には米国ではノーロードと呼べないノーロードファンドがたくさん存在している)。

・投資の世界には確実と呼べるものは少ないが、運用コストだけは確実にリターンを減少させる。例え1年に1%の差でも10年運用を続ければとても大きな差となってくる。

・自分で株式と債券の比率を調整したのだが、組み入れファンドのバラ売りは考えていないのかという質問に対する回答。

中野社長「販売会社になるつもりはないのでバラ売りはしない。セゾン投信は忙しくて投資に時間の割けないすべての年代の方に自信を持っておすすめできる形で提供している。」

加藤代表「日本ではインデックスファンドに対するニーズが少ない。またバンガード社の知名度も低い。この状況で多額の先行投資をして日本で直販を開始したとしてもバンガード社の特徴である低コストのサービスは提供できない。また販売会社経由で販売しようとしても低コストで販売会社の利益が少ないバンガード社のファンドは扱ってもらえない。」(筆者注・バンガード社は全株式をバンガード社のファンドが所有するという特殊な形態で、ファンドの購入者=株主となっています。このため日本での直販についても現時点ではファンド購入者全体の利益につながらないという判断で実現できないようです。中野社長も、セゾン投信もこの形態が理想だが日本の法律ではおそらく無理だろうとのご意見でした。)

・海外ETFなどさらに低コストのライバルが現れたが、さらなるコストダウンは考えていないのかという質問に対する回答。

中野社長「海外ETFが低コストであることは認識している。運用に関心があり定期的にリバランスする手間を惜しまないのであれば海外ETFなどを活用して自分でアセットアロケーションを組む方法もあるだろう。バンガード社は預かり資産を増やすことでコストダウンを実現してきた(筆者注・究極の薄利多売ですね)。セゾン投信も同じ道を歩みたい。」

・サブプライムローン問題で世界経済が不安定だが、今後の動向や投資タイミングを考えて運用するのかという質問に対する回答。

加藤代表「インデックス運用では市場動向の予測や投資のタイミングを調整することは一切行わない。世界経済の割合の変動に合わせてただ毎月リバランスを行うだけ。将来のことを正確に予測できれば理想的だが現実には非常に困難。」(筆者注・アクティブ運用は常に不確かな将来を予想して先回り投資を行おうとする。これに対してインデックス運用は淡々と現状に合わせるだけ。費用対効果や労力対効果の観点で果たしてどちらが効率的かということですね。)

・為替の動向も不安定だがこれをどう考えるべきかという質問に対する回答。

加藤代表「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド、ドル/円、TOPIXのチャートを並べてみると思ったほど為替の影響を受けていないことが分かる。Yahoo!などのサービスで簡単に比較できるので一度ご確認いただきたい。(筆者注・Yahoo!ファイナンスのチャートを拝借して実際に比較してみました。確かに米ドル資産の比率が大きい割にはドル安の影響をあまり受けていないように見えますね。)

saison

青:セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
緑:ドル/円
赤:TOPIX

パネルディスカッションを締め括るにあたって藤沢氏が「投信会社が主催する投資セミナーといえば次はどの銘柄が上がるか、次はどの地域が有望か、この銘柄を買うタイミングはいつがよいかといった話ばかりだが、今回のように投資哲学ばかりを熱く語るセミナーは珍しい」と言っておられましたが、確かに後から考えればファンドの説明がほとんどない不思議な投資セミナーでした。しかし今回のセミナーを通して私も長期投資の重要性を再認識したことは確かです。ただ自他共に認める「投資バカ」の私はハイリスク・アクティブ投資をやめるつもりはありません。これは確率論的に著しく不利と分かっていても宝くじや競馬を楽しむ人が減らないのと同じ構図かも知れませんね。こんな私が言っても説得力がないかも知れませんが、年金の補完などの目的で資産形成を行うならインデックス運用を活用した長期投資が最も失敗の少ない合理的な投資方法であることは確実であると考えます。市場に翻弄され続けてきた私にとって「平均点を狙えばほぼ確実それが実現できる」ことは改めてすごいことだと感じますし、「常に市場が正しい」という投資の真理を踏まえて考えれば、見えない未来を無理に予測しようとせず、淡々と現状に合わせて行く方が楽ちんで合理的だと思いますので。





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この記事へのコメント

kage

おやじダンサーさん、こんにちは。
セミナーの詳細なレポートありがとうございます。体調を崩して参加できなかったので残念に思っていたのですが、おやじダンサーさんのレポートを拝見して内容がよく理解できました。拙ブログでも紹介させていただきました。

Posted at 07:44:03 2007/11/21 by renny

この記事へのコメント

kage

rennyさん

ご紹介ありがとうございます。

アクティブ運用派の私にとっては目から鱗が落ちるような内容満載でした。また中野社長が熱く語る「販売手数料に納得できる存在理由がありますか?」「投信の説明は販売会社経由ではなく運用会社から直接聞きたいと思いませんか?」などの問い掛けや、藤沢氏の「中小企業には厚生年金に加入していない労働者がたくさんおり、本当の格差社会はこれから始まる。貧困が広まれば争いや犯罪などの不幸な出来事も確実に増える。そうならないためにも労使が協力して早急に長期投資を始めるべき。」というご意見など強く共感する点も多々あり、収穫の多いセミナーでした。

Posted at 12:08:17 2007/11/21 by おやじダンサー

この記事へのコメント

kage

地方に住む投資家にとって、このように御丁寧にレポートしていただけることに、ただただ深く感謝する次第であります。
本当にありがとうございます!!

>米国では例え販売手数料が無料でも信託報酬の販売会社取り分が0.25%以上あればノーロードと呼んではいけない

その通り!とつい言ってしまいました(笑)

Posted at 17:06:22 2007/11/21 by cocoa

この記事へのコメント

kage

cocoaさん

コメントありがとうございます。

確かに投資系セミナーは極端な大都市集中ですから、拙文が多少でもお役に立てたのなら幸いです。

今回のセミナーの中で中野社長は「地方で積極的にセミナーを開催し、可能な限り私自身が足を運ぶようにしている」とおっしゃっていました。また「地方の少人数のセミナーはお客様と意見の交換ができるので有意義である」との発言もありました。販促活動の一環とはいえ、この姿勢は積極的に評価されても良いと感じました。

Posted at 18:37:24 2007/11/21 by おやじダンサー

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kage


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