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外債不要論を再検討する

kage

2018/06/09 (Sat)

今回のタイトルに掲げた「外債不要論」とは、長期投資において自らのポートフォリオに外債(外貨建て債券)の組入は不要であるという一つの考え方です。過去のエントリーでもたびたび触れてきたとおり、この考え方はずいぶん以前から専門家や著名ブロガーの中に根強く存在しておりました。加えて投資の世界には、どうせ覚悟の上で為替リスクを取るのなら期待リターンが高い株式で取るのが合理的であるというセオリーもあり、「外債不要論」を補強する形になっております。とはいえバブル崩壊以降長期間に渡り実質ゼロ金利が続く我が国において、相対的に高金利の外貨建て債券は投資対象として魅力的に映りますよね。しかし「外債不要論」においては高金利通貨の価値は結局インフレで毀損するため結果的に国内債券と大差はないと結論付けています。だからわざわざ為替リスクを取ってまで外債を買う必要はないのだと。この理論を極端な事例で説明するなら、FXの世界で最近何かと話題のトルコリラが最適でしょう。トルコの政策金利は2013年の4.50%から現在は17.75%まで跳ね上がっていますが、対円での価値が過去5年でどう変わったかをSBI証券のサイトからお借りしてきたチャートでご確認ください。

トルコリラ/円

ご覧のとおり、2015年1月からわずか3年半でトルコリラの価値は対円で半減してしまいました。これでは例え年利20%であったとしても、価値の毀損をカバーすることができません。なぜなら100✕120%✕120%✕120%✕110%(半年分)=190.08ですので。そもそも通貨の金利とは自己増殖機能のようなものです。すなわち金利17.75%のトルコリラは1年間でその流通量が自動的に17.75%も増えてしまうのです。モノの価格は需要と供給で決まるのが経済の大原則ですので、流通量(供給)が増えた通貨の価値がその分だけ毀損(下落)してしまうのは致し方ありません。そう考えると高金利という部分にだけ注目して投資をすると後々痛い目に遭う可能性があることもご理解いただけるでしょう。

私自身がセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドを通じて過去11年間外債を含む国際分散投資を継続してきて受けた印象を正直に言わせていただければ、「為替の変動に翻弄され過ぎる」でした。本来株式と債券は逆の値動きをしやすいため(リスクオンになると株が買われて債券が売られ、リスクオフになると逆に株が売られ債券が買われる)分散投資の相性は抜群です。しかし私たち日本の個人投資家が国際分散投資を行うとどうしても外貨比率が高くなってしまい、海外株式と海外債券が為替変動リスクを同時に受けて評価額が乱高下しがちであるという難点があります。これではリスク分散をした意味がありませんよね。

ですからもし私がこれから長期投資を検討する方にアドバイスするとしたら、為替リスクはすべて株式で取り、債券は国内のみとすることをおすすめしたいと思います。具体的には株式部分は現在数多く存在する低コストインデックスファンドの中から全世界分散型でも米国集中型でもご自身の判断でご自由にお選びください。そして債券部分は経済評論家の山崎元さんも強力に推奨されている個人向け国債変動10年が良いでしょう。その際の株式と債券の比率はその時点におけるご自身のリスク許容度に合わせてご自分で決定してください。セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドのように株式と債券の比率が50:50というのは考え方としてはとても分かりやすいですが、リスク許容度は人それぞれですので、それくらいは自分で考えて決めましょうよというのが私の意見です。

この手法なら債券部分(個人向け国債変動10年)は管理コストがゼロですので、トータルの運用コストをかなり抑えられるはずです。さらに株式部分と債券部分の運用を分離することで、今年2月の株価急落のような場面に遭遇しても「よーし、今月はリバランスとして債券投資の資金も株式に振り向けるぞ」といった対応が可能になり、精神面でもずいぶん楽になるのではないでしょうか?これが分離不可能なセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドであれば、株安+円高のダブルパンチが早く過ぎ去ってくれることをひたすら天に祈るしかありませんので、気持ちの余裕がずいぶん違ってきますよね。

今回改めてこの「外債不要論」を蒸し返そうと思ったきっかけはひふみ投信の5月度月報(ひふみのあゆみ)(リンク先はPDFファイルです)に掲載されていた下記の図表を目にしたことでした。

リスクとリターン

ご覧のとおり先進国国債と新興国国債のリターンはマイナス圏に沈んでいます。これではわざわざリスクを取った意味がないということになり、投資信託格付けチェック(2017年版)の評価では「投資する価値なし」と判断せざるを得ません。一方で日本国債はリスクとリターンがほぼ釣り合っており、投資する価値は大いにあったと言えるでしょう。

もちろんこれらは過去3年の結果論に過ぎません。切り取る期間を過去5年にしてみれば先進国国債と新興国国債のリターンはプラス圏に浮上しますし、これからの3年間は日本国債を凌駕する投資効率に大化けする可能性だって十分にあります。しかし過去3年間に限っては「投資する価値なし」であったことも紛れもない事実であり、私たち日本の個人投資家はこの現実を真摯に受け止めるべきでしょう。この実態を踏まえた上で、皆さんは「外債不要論」をどう評価されるでしょうか?

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この記事へのコメント

kage

応答コメント

お久しぶりです。いつもながら読み応えある記事ですね。

世界的な金利上昇傾向にある中で外債不要論は根強く、かなり悩みました。ですがこの先20年は投資の世界にいるだろうことを考えて一部拠出しています。上がることもあればいずれまた下がることもあるだろうと。ベストを求める方には不要かもしれませんがベターでよいという私のような考えなら外債はアリですね。教科書的な「分散」のセオリーにしたがいました。

貴殿と同時期にブロガーのカンチュンドさんも同様のテーマで投稿されているのでご一読なされてはいかがでしょう。

ご自愛ください。



Posted at 23:14:38 2018/06/18 by 通りすがり3

この記事へのコメント

kage

通りすがり3さん

コメントありがとうございます。

私は最近、その「教科書」にも疑問を抱いているんですよね。同じ国際分散投資でも日本人とアメリカ人では負う為替リスクが天と地ほど違いますから。なので日本人には日本人なりのリスクコントロール方法があるのではないかと思うのです。「外債不要論」はその一つの選択肢と言えるのではないでしょうか。

そもそも債券投資は株式投資に対する保険のような役割が期待されているはずですが、外債は為替変動リスクをもろに受けてしまうためその役割を十分に発揮できていません。ですから私は外貨建て生命保険と同様のもやもや感を抱いてしまうのです。

Posted at 06:28:23 2018/06/19 by おやじダンサー

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kage


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