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誰のための株高か

kage

2017/11/11 (Sat)

本エントリーのタイトルは11月7日(火)に日本経済新聞電子版に掲載された下記の記事からいただきました。今回はこの件について思うところをつらつらと書き連ねてみたいと思います。

誰のための株高か バブル後戻り高値に踊れぬ個人投資家

上記記事によると、日経平均株価が1996年6月に付けたバブル経済崩壊後の戻り高値(22,666円)を約21年ぶりに上回っても個人投資家から株高を喜ぶ声はあまり聞こえてこないとのこと。長期間大きな含み損を抱えて売るに売れない状況(いわゆる塩漬け状態)になっていた株が思わぬ株高の恩恵でようやく黒字に転換したところでスッパリ売り払って株式市場からおさらばする人も少なくないそうです。東京証券取引所が発表している株式週間売買状況を見ても10月度第1週から11月度第1週まで見事なまでに個人投資家は売り越し、外国人投資家は買い越しを続けており、実際に個人投資家から通称「やれやれ売り」がかなり出ているのでしょうね。ちなみに個人投資家の売却増加についてはセゾン投信の中野社長も11月度のセゾン投信 NEWS LETTER(リンク先はPDFファイルです)の中で次のように言及しておられます。

ところで、最近セゾン投信の一部の顧客行動に大きな変化があります。解約が増加しているのです。もちろんコツコツ泰然自若に買い続けているお客さまの方が圧倒的に多いことに変わりはありませんが、特に10月は最高値を更新していたのを待っていたかの如き、一斉解約に走る方がかなり多かったです。最近「りかく」という言葉が個人投資家間で定着しているようです。利益確定を意味する「りかく」への欲求を止められない人たちが、「セゾン号」のお客さまにさえ結構いらっしゃることに、儲かったと喜んでおられる姿は決して悪いことじゃない、とは思いながらも正直残念でなりません。利益を実感してみたいという気持ちは理解できますが、それならばコツコツ積立投資をしてきたのと同様、少しずつ売却して欲しいなあと感じています。


ハイリスク投機家を自認する私は決して「りかく(利確=利益確定)」を否定しません。それどころかその重要性を身に染みて理解しております。例えばあなたが最近の世界的株高の追い風を受けて膨らみ続ける含み益を眺めつつ、「この利益で何かおいしいものを食べに行こう」とか「この利益で来年は海外旅行に行こう」と妄想しているとしましょう。このように含み益を眺めながら妄想するのはそれはそれで楽しいことですし、そもそもそのような妄想ができる状況にあること自体が幸せであるともいえます。しかしいざ実際にその妄想を実現させようとするならば「りかく」を避けて通ることはできません。含み益などは所詮「絵に描いた餅」に過ぎず、あくまでも利益は「確定してナンボ」なのですから。とはいえこれは利益を目的にした投資に限ってのことであり、資産形成を目的にした長期投資ではまた話が違ってくるのではないか?というのが私の意見です。

2016年1月31日付のエントリー「長期投資の成否は何を基準に判断すべきか」にも書いたとおり、私個人の考えは「長期投資においては例え運用成績がマイナスになっても結果的にある程度まとまった資産形成ができたのであれば成功と考える」です。すなわち運用成績がどうであれ、何もしなければ飲み代や遊興費などの無駄遣いで消えていたかも知れない資金をコツコツと積み上げたことで結果的にある程度まとまった資産形成ができたのであれば、私的にはその長期投資は成功なのです。だからこそ少なくとも私にとってはセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの基準価額が設定来最高値を更新したことは売却の理由にはなりません(現時点でもし売却の検討をする可能性があるとすれば、こちらのエントリーに書いた条件に合致した時だけです)。そういう観点では確かに中野社長がおっしゃるとおり、「日本社会に長期投資を一般化させることの難しさを思わずにはいられません」ね。

とはいえ「将来の値動きは誰にも分からない」のが相場の真理であることは厳然たる事実ですし、「利益は確定してナンボ」が現実であることも疑う余地はありません。そもそも投資はすべからく自己責任・自己判断において行うものです。ですから現状における売却の増加を抑止したり非難したりする権利は誰にもありません。ただし冒頭でご紹介した記事が指摘しているように、今の株高局面における個人投資家の一貫した売り継続が結果的に株高の恩恵を外国人投資家と一部の公的部門(日銀やGPIFなど)に集中させる結果になっていることは誠に残念です。記事にあるように、何かと問題の多い日銀のETF買いが個人投資家の株離れを助長しているのがもし事実であれば、「貯蓄から資産形成へ」を実現するためにはもっと違ったアプローチの思い切った手段が必要なのかも知れませんね。例えば私の貧弱な発想で思い付くのは、NISAを細分化するなどの小手先の対策ではなく思い切って期間限定で証券税制を完全非課税化するのはいかがでしょう?期間5年なら東京五輪後の景気減速懸念対策にもなりそうですし。おそらく今の日本にとっては個人投資家の売りを懸念するより、一人でも多くの人に投資の世界に入ってきてもらい個人投資家の厚みを増すことが先決なのではないでしょうか?

最近の株高報道に対してネット上では「株を持っている一部の富裕層にしか恩恵がなく、一般庶民には無関係」というような意見をよく目にします。しかし、私に言わせればそれはただ単にあなたが恩恵を受ける権利を放棄しただけでしょう。誰にも株の売却を止める権利がないのと同様に、誰にも株の購入を止める権利はないのです。今や投資信託の購入は100円から可能なのですから、「一般庶民には投資する余裕などない」という言い訳はもはや通用しません。日々のコーヒー代や毎月の遊興費を少し削るなどで家計をやり繰りすれば、多少の投資資金を捻出することなど比較的容易なのではありませんか?その努力をせずに株高の恩恵を受けられないのは当たり前のことであり、それも自己責任です。要するに「貯蓄から資産形成へ」を実現するためにはこのような「株高?自分には関係ない」と思っている多くの人たちを投資の世界に引き込む必要があるわけで、来年から鳴り物入りで始まる「つみたてNISA」であっても少々役不足なか?というのが私個人の偽らざる感想です。ただしこのまま手をこまねいていてはいつまで経っても米国のような「経済→市場→家計」の成長が続く好循環にはほど遠い状況が続きますので、ここはひとつアベノミクス総仕上げとなる大きな矢を撃ち込んでいただきたいものです。もし証券税制完全非課税化が無理であれば、消費増税は甘んじて受け入れますので証券税制に軽減税率を適用して以前のように10%に戻すなどの特別対策を是非ご検討ください。それで「貯蓄から資産形成へ」が進めば、とりもなおさず「国民のための株高」となりますので。

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