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リパトリエーション

kage

2017/09/09 (Sat)

ご承知のとおり9月3日(日)に北朝鮮が6回目となる核実験を強行したことにより、先週と今週では市場の雰囲気が一変してしまいました。例えば為替市場におけるドル円を見てみると、9月1日(金)の終値1ドル=110.25円に対して昨日9月8日(金)の終値は1ドル=107.83円と、一気に2.42円も円高が進行しています。私のような凡人は、北朝鮮を震源地とする地政学的リスクの高まりが要因なのだから隣国である日本の通貨・日本円にはむしろ下落圧力がかかるのでは?と思ってしまうのですが、実際に市場を動かしているメカニズムはそう簡単ではないようです。現在の円高進行の背景にはもちろん過去の常識や経験から「リスクオフ=円買い」という条件反射的な動きもあるでしょう。しかし今回のタイトルに掲げた「リパトリエーション」も決して無視できないひとつの大きな要因となっているそうなのです。

リパトリエーション(Repatriation)とは略称でリパトリとかレパトリとも呼ばれ、海外にある資金を本国に還流させることを指します。具体的はグローバル企業が海外子会社の利益を国内に戻したり、金融機関や機関投資家などが外貨建て資産を売却して国内に資金を戻すことなどが代表例といえるでしょう。

海外の資金を国内に戻す際には一般的に外貨売り+自国通貨買いの取引を伴いますので、自国通貨高要因となります。ご承知のとおり日本は世界一の債権国で企業や機関投資家から個人に至るまで海外に多くの資産を抱えていますので、ひとたび国内に危機的な状況が起きると海外の資産を日本国内に戻す動きが活発になるとの思惑を呼び、それが投機的な円買いにつながるとのこと。実際に2011年3月に発生した東日本大震災後には強烈な円高となりましたよね。今回の北朝鮮を震源地とした地政学的リスクの高まりが円高につながったのもおそらくこれと同じ流れだったのでしょう。

このように日本におけるリパトリエーションは自国通貨である円の値上がり要因となりますが、もしこれが米国で起きれば反対にドル高円安要因になります。過去には実際に米国におけるリパトリエーションがドル高円安をもたらした事例もありました。2004年10月にブッシュ政権下で成立した本国投資法(HIA)では2005年の1年間限定で海外の資金を国内に戻した際に課せられる税率を通常の35%から5.25%まで大幅に引き下げるという大盤振る舞いで強烈なドル高を演出することになりました。ご参考までにロイターのサイトからお借りしたドル円のチャートをご覧ください。本国投資法(HIA)の効力が発生した2005年1月1日(厳密には初取引日の1月3日)は1ドル=102.69円で始まり(下図左)、効力が終了した2006年1月1日(厳密には初取引日の1月2日)の始値は1ドル=117.90円までドル高が進行していました(下図右)。ちなみにこの間のドル最高値は12月7日に付けた1ドル=121円ちょうどです。

ドル円2005年1月 ドル円2006年1月

為替市場におけるドル高円安の流れが日本株にとっての大きな追い風になることは今も昔も変わりません。論より証拠で本家Yahoo!からお借りしてきた下記チャートをご覧ください。2005年1月に11,458円でスタートした日経平均株価(下図左)は1年後の2006年1月には16,295円まで上昇しています(下図右)。

日経平均株価2005年1月 日経平均株価2006年1月

それでは当の米国株はどうだったのか?と申しますと、実はこれが下がっていないのです。下図左右を比較していただければお分かりのとおり、2005年の1年を通してジリ高が続いていますね。そして本国投資法(HIA)が失効した後もしばらくはこの幸せな時間が続いたものの、その後発生したリーマンショックで奈落の底に突き落とされたことは下記チャートを見るまでもなく皆さんすでにご存じのとおりです。

S&P500指数2005年1月 S&P500指数2006年1月

今回なぜ私が10年以上前の昔話をわざわざ蒸し返したのかと申しますと、もしかするとこの歴史がまた繰り返されるかも知れないという希望的観測からに他なりません。すでに以前からあちこちで報道されていますが、米国のトランプ現政権もかつての本国投資法(HIA)と同じような仕組みでリパトリ(レパトリ)減税を実施したい意向を持っているとのこと。もしこれが実現すれば、国際分散投資を実践する個人投資家にとっても「夢よもう一度」の期待が大いに高まるのでは?と取らぬ狸の皮算用をしているのです。ただし事前の報道によるとトランプ現政権が想定している税率は10%で前回の5.25%ほどの大盤振る舞いではない点には注意は必要でしょう。一方で前回は1年限定の時限措置だったのに対して、トランプ現政権は恒久化を目指しているとのこと。もしこれが実現すれば前回ほど急激なドル高ではなく、長期的に継続する緩やかなドル高トレンドを生むことになるのかも知れませんね。

いずれにせよリパトリ(レパトリ)減税の動向が為替市場に与える影響は決して小さくありませんので、国際分散投資を実践する個人投資家としては今後の情報には細心の注意が必要でしょう。信念を持って完全放置の自動積立投資を継続する覚悟であれば話は別ですが、少しでも投資タイミングを狙うのであればもし仮にリパトリ(レパトリ)減税が実現した場合は結構分かりやすい形でチャンスを狙えるのではないでしょうか?例えば前回の経験からリパトリ(レパトリ)減税の決定から発効までの間は海外資金の米国内環流が抑えられるため(どうせなら減税の恩恵を受けたいと思いますからね)むしろドル安の流れになると考えられるため、私たち日本の個人投資家にとっては絶好の外貨建て資産買いのチャンスを提供してくれるかも知れません。一方で前回は海外に多くの資産を抱えている米企業の株価は減税の恩恵が大きいとの思惑からいち早く上昇し始めましたので、個別株を狙うのであれば早めの行動が必要かも知れませんね。

もちろんリパトリ(レパトリ)減税の構想がご破算になって市場にネガティブな影響を与える可能性だって否定はできませんが、個人的にはこのところ重苦しい雰囲気に覆われている市場環境を一変させてくれるきっかけになって欲しいと切に願っております。

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