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外貨建保険

kage

2017/02/05 (Sun)

先日、ある知人からこんな相談を受けました。「妻が知り合いの保険外交員から外資の生命保険を勧められたのだがどう思う?」と。「外資の生命保険」と聞いて私はテレビCMなどでおなじみのカタカナ系社名の保険会社を思い浮かべたのですが、話を聞いてみるとどうやら違うようです。それでは日本ではなく海外で営業している保険会社との直接契約を指すのか?と思ったらそれも違うようでした。そして詳しい事情を聞く内に判明したのが今回のタイトルに掲げた「外貨建保険」、すなわち外貨建ての生命保険だったというわけです。そもそも私は生命保険に対する関心が薄く、外貨建ての生命保険の仕組みについても詳しくは知らなかったのですが、いろいろと問題が指摘されていることだけは風の噂で聞いていました。そこで私はその知人に対して即座に「止めておけ」と答えました。その理由として私が説明した主旨はおおむね以下のとおりです。「リスクを覚悟して為替差益を狙うこと自体は否定しない。かく言う私自身も積極的に為替リスクを取っている。しかしそれを生命保険で行う必要はまったくない。為替リスクを負う覚悟があるのなら他にもっと良い方法がたくさんある。」万が一の事態に備える生命保険ではあらかじめ必要な保障額を計算して契約するはずなのに、為替レート次第で実際の受け取り額が変わってくるのでは生命保険本来の役割が果たせません。さらには保険料を運用するのは保険会社の仕事なのですから、保険会社が為替リスクを負って上手に運用してくれればいいわけで、そのリスクを契約者に押し付けるのはいかがなものか?とも思います。契約者はただでさえ高い手数料を支払っているのですから、もし私なら外貨建保険を勧める保険外交員に対して「為替リスクはそちらで負ってよ。あなた方は運用のプロなんでしょ?」と言ったでしょう。

生命保険会社が外貨建ての商品を勧める背景には日銀のマイナス金利政策導入により国内債券運用環境が厳しくなっている現状があるのでしょう。論より証拠で代表的な国内債券型インデックスファンドである「SMT国内債券インデックス・オープン」の過去9年間のチャートをご覧ください(なおこのチャートはいつものようにYahoo!ファイナンスからお借りしました)。

SMT国内債券インデックス・オープン

ご覧のとおり、長く続いたデフレ時代からアベノミクス時代に至るまで一貫して我が世の春を謳歌してきた国内債券も昨年7月をピークにして明らかに流れが変わったように見えますね。国内債券は利息(インカムゲイン)がマイナスで売却益(キャピタルゲイン)にも期待できないとなると、為替リスクを承知の上で外債投資を検討せざるを得ないと考えるのは自然の流れです。しかし自分でそのリスクは負いたくないので契約者に押し付けるというのはあまりの仕打ちではありませんか?

突然ですがここで昔話を一席。昔々日本の投資信託業界で一世を風靡した「通貨選択型投信」というものがありました(今もありますが)。これは「日経平均株価に連動するインデックスファンドを米ドル建てで買う」というような仕組みになっており、米ドルの部分をユーロやポンドといった先進国通貨から南アフリカランドやブラジルレアルなどの新興国通貨まで自由に選択できるのです。これにより上手く行けば株式の値上がりと通貨の値上がりにより「グリコじゃないが一粒で二度おいしい(古い表現で済みません)」状況を生み出せるのです。ただし反対に上手く行かなかった時は株安+通貨安のダブルパンチになってしまうことは言うまでもありません。このリスクが極めて高い投機的特徴が禍(わざわい)して、通貨選択型投信は投信ブロガーの評価が極めて悪かったのです。しかしハイリスク投機家を自認する私は一定の評価をしておりました。なぜなら投資家にはリスクを承知で一攫千金を狙う自由もあり、そのためには低リスクから高リスクまで多様な商品ラインナップが必要だと考えたからです。清濁併せ呑む投資の世界においては通貨選択型投信のような選択肢も必要だ!というのが私の持論でした。しかしそんな私でも当時の通貨選択型投信には問題があると感じていました。その理由はわざと仕組みを複雑にすることにより高い手数料を取っていたためです。外貨建保険はいわばこの通貨選択型投信の保険版ともいえるでしょう。

保険の手数料体系は意図的なのか見えにくくなっていますので、外貨建てになることにより具体的にどのくらいの手数料が付加されるのか私には分かりません。しかしまったくゼロでないことだけは間違いないでしょう。すなわち外貨建てを選択することにより支払う手数料は確実に増えるはずです。また目に見える事例としては為替手数料が挙げられます。外貨建保険では保険料の支払い時と保険金の受け取り時に二重で為替手数料を徴収されるのです。例えその手数料はわずかでも保険料を毎月支払うのであれば「塵も積もれば山となる」ですし、一括払いや保険金受け取り時には金額が大きくなりますので結果的に為替手数料もバカになりません。ちなみに投資信託においては為替レートの仲値(TTM)で基準価額が計算されるため、為替取引に関する手数料を支払う必要はありません。あと個人的には課税関係も気になりました。ご承知のとおり投資信託なら不幸にして損失を確定しても確定申告をすれば翌年以降3年間損失を繰り越すことができます(ただしそもそも非課税のNISAや確定拠出年金は除きます)。もし外貨建保険で為替差損が生じた時には何か救済策はあるのでしょうか?逆に円安で為替差益が生じた時に確定申告は必要なのでしょうか?私自身は外貨建保険にまったく興味がないので詳しく調べる動機も意欲もないのですが、ザッとネット検索をしてみても明確な解答は見当たりませんでした。このあたりの分かりにくさや不透明さも不安の種ですね。

もし皆さんが保険外交員に外貨建保険を勧められたらこう聞いてみてください。「あなたはこの保険に入りたいですか?」と。もし「入りたい」と答えたらその保険外交員の金融リテラシーが疑われます。また「入りたくない」と答えたらなら、その良心を疑います。もとより運用難を背景に一部の保険では保険料の値上げや販売中止が相次いでいることはご承知のとおりです。このように明らかに保険会社にとって不利な(=裏返せば契約者にとって有利な)状況において保険外交員から積極的に勧められる保険には何か裏があるに違いないとまず疑ってみることが必要なのではないでしょうか?例え知り合いの保険外交員でも疑わなければならないのは悲しいことですが、現実に顧客をカモにしようとする金融機関が存在する以上は自ら金融リテラシーを高めて自衛するしかありませんので。

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この記事へのコメント

kage

おっしゃってる事にほぼ賛成しますが、外貨建ては100%ダメと言い切るのはどうかと思います。

円高の時期に一時払いで入る外貨建ての保険は高利回り保険+外貨建ての投資と考えればメリットもあります。
なのでやはり「入る時期による」と言うぐらいが良いように思います。

小生は、今の時期なら入らない外貨建て保険にドル80円の時には入りました。
たとえドル70円になったとしても為替差損分は保険利回り分でチャラ、国内の超低利回りの保険よりは十分に夢がありました。

Posted at 16:18:23 2017/02/06 by 名無し

この記事へのコメント

kage

名無しさん

コメントありがとうございます。

もとより自分の価値観を人様に押し付けるつもりは毛頭ないのですが、やはり私には100%ダメに思えます。為替リスク覚悟で夢を追うというのであれば、必要な保障はネット保険の掛け捨てタイプにして差額分を高レバレッジのFXに回せばものすごい利益になっていたのではありませんか?あるいはFXより低リスクの海外債券型インデックスファンドでも1ドル=80円前後だった2012年頃に買っていれば今頃+40%超の利益を得られていた計算になります。

本文中には書いていませんが、保険は保険会社の信用リスク(破綻リスク)も負わなければなりません。これが投資信託なら例え販売会社・運用会社・信託銀行の3社が同時に経営破綻したとしても100%保護されますので。

これも私の個人的な意見ですが、保険も他の金融商品と同様に「シンプル・イズ・ベスト」なのではないでしょうか?

Posted at 01:03:03 2017/02/07 by おやじダンサー

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kage


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