2017 03 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30. »  2017 05

残薬

kage

2016/11/12 (Sat)

今回のタイトルに掲げた「残薬」とは、医師から処方されたのに飲み残したり飲み忘れたりして余った薬のことです。一部報道によると残薬による医療費の無駄は500億円近くにもなるとのことで、日本が抱える大問題である社会保障費増加の一因にもなっています。この残薬問題の背景にはそもそも高齢化の進行で病院に行く人の絶対数が増えていることがあり、加えて安易に投薬に頼る日本の悪しき医療習慣や病院間でカルテ(医療データ)が共有されないことで投薬の重複が生じることも要因になっていることでしょう。患者側も「お薬手帳」を適切に活用すれば少なくとも投薬の重複は防ぐことができるのですが、なかなか活用が進まないのが現状のようです(ある調査によるとお薬手帳の保有率は約6割、活用率は約3割とのこと)。以前はお薬手帳を使わない方が薬剤服用歴管理指導料が安くなり、結果的に調剤薬局に支払う自己負担額も減るため、意図的にお薬手帳の使用を断っていた患者さんもいたようですが、今年4月からは逆に一定の条件を満たした場合にはお薬手帳を使用した方が自己負担額が減るように診療報酬が改定されていますのでもはや活用しない理由は存在しません。ぜひ積極的に活用してください。特に私のように副作用の強い抗ガン剤を服用したり外科と内科から別々に薬の処方を受ける場合は、同時に服用できない薬も存在し、お薬手帳がリスク回避のための命綱となるケースもありますので。

少々脱線してしまいましたので話題を元の「残薬」に戻しましょう。実は我が家にもこの残薬が少なからず存在しているのです。そこで今回はその数々をご紹介しつつ、日本医療の問題点を考えてみましょう(少々大げさですが)。

まず最初にご紹介する我が家の残薬は「ケナログ口腔用軟膏0.1%5グラム」です。これは口内炎の治療薬で、私が術後補助化学療法で抗ガン剤(ユーエフティ)を服用していた際に副作用として口内炎ができたため処方してもらいました。しかし処方してもらった時点で口内炎はすでに治りかけで、その後は同じ副作用が出ることはなかったため、結果的に未使用のまま今も冷蔵庫で保管しています。ちなみに薬価を調べてみたところ336円でした。

01

次にご紹介するのは「ヒューマログ注ミリオペン」です。これは糖尿病治療に用いるインスリン注射器です。私の場合、大腸ガンと糖尿病がほぼ同時に発覚したのですが、以前「糖尿病は辛いよ」に書いたとおり手術を受けるためには可及的速やかに血糖値を下げる必要があり、糖尿病の治療はいきなりインスリン注射からスタートしました。実はインスリン注射にも2種類あり、このヒューマログは毎食前に使用する速効性のあるタイプでした。この他に就寝前に使用するゆっくり長く効くタイプのトレシーバも使っていました。

02 03

ヒューマログはご覧のとおり携帯に便利なようにペン型の形状をしています。右側の写真にある目盛はインスリンの注入量を示す単位で、キャップ部を回すことで調節が可能です。そしてそのキャップ部を押し込むことで注入する仕組みになっています。ちなみに治療開始時の私の注入単位数はヒューマログ・トレシーバ共に4でした。それでも最初は副作用で低血糖症になり、それまでの人生で経験したことのないような激しい悪寒に襲われました。低血糖症の症状が出た場合はすぐに糖分を補給するように指導されていたのですが、この時の私はまずしたことは熱いお風呂に入ることでした。その湯船の中でも悪寒が止まらずブルブルと震えていたことを今でも鮮明に覚えています。4単位でこれなのに手術直前にはヒューマログ8単位、トレシーバ12単位まで注射量が増えました(ヒューマログの単位については少々記憶が曖昧ですが)。それでも血糖値が高いことを理由に手術で硬膜外麻酔が使えず、後で大変な思いをしたことは「糖尿病は辛いよ」に書いたとおりです。そして手術後は飲み薬による治療に切り替わったため、結局このヒューマログ1本は使わずじまいでした。実は退院時に使いかけのものが1本あったのですが、使用開始後は長期保存ができないため病院に廃棄をお願いしました。未使用のこの1本はケナログ同様、冷蔵庫に保管しています。なお薬価を調べてみたところ1本1,952円でした。

次にご紹介する「ナノパスニードルⅡ」は薬ではありません。これはヒューマログやトレシーバの先端に取り付ける注射針です。衛生上の観点から毎回使い捨てになっています。この針は日本が誇る高い技術力で開発された超極細針(いわゆる「痛くない針」)で、初めてのインスリン注射に大いに不安を抱いていた私にとって誠にありがたい存在でした。左の写真が使いかけのもので、この他に右の写真のように未使用の1箱が残っています。なお価格を調べてみたところ1本18円でしたので、右写真の未使用1箱で1,260円となる計算です。

04 05

次にご紹介する「グルテストNeoセンサー」は血糖値測定用のパーツです。インスリン注射を行う糖尿病患者は、毎日自分自身で血糖値を測定して記録することを義務付けられます。ちなみに私の場合は毎日3回(毎食前)でスタートしましたが、入院後は就寝前も加えて1日4回になりました。血糖値の測定器は病院から貸与という形になっていましたが、このパーツは患者の買い取りです。具体的な使用方法は、このパーツを測定器に差し込み、左写真下側にある細い切れ込み部分に血液を吸い取らせるのです(実際には血液に軽く当てるだけで吸収してくれます)。入院後はずっと看護師さん持参のものを使っていましたのでこのように余ってしまいました。ちなみに右の写真の左側は使いかけで、右側は未使用です。なお右側1箱のメーカー希望小売価格は4,410円でした。

06 07

次にご紹介するのは「ブラッドランセット30G」です。これも針なのですが、先に紹介した「ナノパスニードルⅡ」とは違って「痛い針」です(あくまでも比較上の感想ですが)。具体的な使用方法は、これをヒューマログやトレシーバに似た機器に装着し、指に向かって針を撃ち込み、血糖値測定のための血液を採取するのです。血糖値測定に必要な血液量(ゴマ粒大)を確実に採取するためには、あえて「痛い針」である必要があるわけですね。左写真にある上部の丸い部分を切り取ると(クルクル回すように力を加えると取れます)中に針があり、使用後に廃棄する際には針を機器に装着したまま切り取った丸い部分にはめ込み針を覆うカバーになる仕組みです。ちなみに使用後の針は医療廃棄物となりますので、決して家庭ゴミとして捨ててはいけません。必ず病院に廃棄をお願いしてください。なお価格を調べてみたところ、ネット通販で1箱500円前後でした。それが我が家には右の写真にあるとおり、使いかけが1箱+未使用が2箱残っています。

08 09

次にご紹介する「アルウエッティone-E」はご覧のとおり消毒用アルコール(エタノール80%)を染み込ませた綿です。インスリン注射や血糖値測定のために採血する際には針を刺す部分の消毒が必要ですし、ヒューマログやトレシーバの針を装着する部分(ゴム状になっています)の消毒も必要です。価格を調べてみたところ、ネット通販で1箱300円弱でした。写真にある1箱は使いかけで、残っているのは約半分です。

10

次にご紹介するのは「残薬」とは無関係の1冊のノートです。私はインスリン注射を行っている間、この「自己管理ノート」に毎日毎日自分で測定した血糖値を書き込んでいました。今回改めて記録を確認してみたところ、手術当日の3月30日午前が最後になっていました。ちなみに病院から貸与された血糖値測定器は最大450件の記録が可能で、それをUSB端子経由でパソコンに転送できるため、このノートは文字通り自己管理のためだけに存在するわけです。今回のエントリーを書くにあたって久しぶりにこのノートを開いてみて、大変だったあの頃のことを懐かしく思い出しました。「懐かしい」という感覚が芽生えたのも、おそらく月日が経過したおかげなんでしょうね。

11

最後にご紹介するのはご覧のとおり紛れもない「薬」ですが、今のところ「残薬」ではありません。糖尿病の治療薬である「メトグルコ」は私が毎日服用している薬なのですが、以前こちらのエントリーでも書いたとおり、半年に一度のCTスキャン(造影剤あり)検査を受ける際に検査日の前後2日間は服用を止められるのです(造影剤との相性が悪く腎機能障害を起こす危険性があるため)。ですから1回CTスキャン(造影剤あり)検査を受けるたびに5日分の服用が後ズレすることになります。しかし薬の処方は3ヵ月毎に3ヵ月分ですので、残薬を使い切らない内に次の処方を受けるという悪循環に陥っているのです。ただしこのケースでは自己申告で調整が可能ですので、どこかのタイミングで内科の担当医に相談しなければなりませんね。

12

以上、我が家の「残薬」の数々をご紹介して参りましたが、実は最後の2つ(「自己管理ノート」と「メトグルコ」)以外には共通点があります。それはいずれも私が高額療養費制度の適用を受けていた時に処方されたものだということ。これが何を意味するのかと申しますと、これらの「残薬」があろうとなかろうと私の自己負担額はまったく変わらなかったのです。しかしこれらの「残薬」で医療費が無駄になったことは紛れもない事実です。それでは誰がそれを負担してくれたのでしょうか?政府や厚生労働省が親切に補填してくれたのでしょうか?もちろんそんなはずはなく、私の「残薬」にかかった費用を負担してくださったのは言うまでもなく皆様方、日本全国の健康保険加入者に他なりません。私自身大腸ガンという大きな病気にかかったことで高額療養費制度には大変お世話になり、本当にありがたい制度だと思っています。しかし一方で一人の国民としては、このままでは早晩日本の医療制度は破綻するという危惧も禁じ得ません。医療制度を含む我が国の社会保障制度改革は待ったなしの状況であることは誰の目にも明らかです。しかし「もしガンが再発したら」と考えると、高額療養費制度がなくなっては困るというのが正直な気持ちです。我が家に眠る「残薬」の数々を眺めながら、そんなジレンマに苛まれた土曜日の午後でした。

(Sponsored Link)

関連記事

この記事へのコメント

kage

こんばんは。薬剤師兼ちょい投資家です。メトグルコの所ですが、

>造影剤との相性が悪く肝機能障害を起こす危険性があるため

は肝臓ではなく腎臓ですね。
細かい所ですが・・。

色々勉強になる記事ありがとうございます。

Posted at 01:25:03 2016/12/09 by ふぁるこん

この記事へのコメント

kage

ふぁるこんさん

コメントありがとうございます。

CTスキャン(造影剤あり)でメトグルコの休薬が必要な理由については口頭でしか説明を受けていなかったため勘違いしていたようです。早速該当部分は訂正させていただきました。貴重なご指摘、誠にありがとうございます。

念のため手元にある「ヨード造影剤使用の問診・説明・同意書」や「お薬一時中止のお願い」を確認しましたが、やはり休薬が必要な理由については書かれていませんでした。「ちょっとこれは不親切なのでは?」と勘違いしていた自分の責任を転嫁しております。

Posted at 08:21:00 2016/12/09 by おやじダンサー

コメントフォーム

kage


URL:




Comment:

Password:

Secret:

管理者にだけ表示を許可する

この記事へのトラックバック