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確定拠出年金のスイッチングは時間がかかる

kage

2016/06/11 (Sat)

確定拠出年金におけるスイッチングとは、現在保有している運用商品を売却して他の運用商品に買い換えることを指します。そしてあらかじめスイッチングの指図(一般的な資産運用における注文と同じ意味です)を出しておけば、後は自動的に一連の手続きが完了する仕組みになっています。これが特定口座や一般口座における投資信託であれば売却と購入の注文をそれぞれ別々に出す必要がありますので、かかる手間という観点では確定拠出年金のスイッチングの方が格段に楽であることは間違いありません。ただし本エントリーのタイトルに掲げたとおり、確定拠出年金のスイッチングにはかなり時間がかかることもまた事実です。もしスイッチングという単語のイメージから即座に乗り換えが可能だと思われている方がおられるなら、それは誤解です。確定拠出年金におけるスイッチングもやっていることは基本的に特定口座や一般口座の投資信託の乗り換え(売却→購入)と同じですので、約定日や受渡日の制約を受けることはぜひ知っておいてください。そこで本エントリーでは5月31日付のエントリー「確定拠出年金のスイッチングを実施」でご報告した私自身の事例を基に、確定拠出年金のスイッチングには実際にどれくらいの時間がかかるのかをご紹介しましょう。

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それではまず今回のスイッチングに関する約定明細をご覧ください(なお数量・金額は引き続き非公開とさせていただきます)。

DC003

ご覧のとおり6月1日に売却が行われ、6月7日に購入が実施されていることが分かります。カレンダー上では6月1日から7日までは6日間ですが、この間に土曜日と日曜日が含まれますので金融機関の営業日でいえば4営業日ということになります。それではこの4営業日を費やした具体的な理由は何なのでしょうか?それは下記明細をご覧いただければお分かりいただけると思います。

DC001 DC002

左が先進国株式クラス、右が先進国債券クラスのスイッチング明細ですが、ご覧のとおり取引スケジュールはまったく同じです。すなわち5月30日の夜に指図(注文)を出す→5月31日にその指図が確定→外貨建て資産を含む運用商品であるため売却の約定日は翌営業日の6月1日に→売却代金の受け取りはさらに3営業日後の6月6日となる→売却代金が口座に入ったことを受けて同日購入の指図が実行される(筆者注:指図者本人は何もする必要はありません)→外貨建て資産を含む運用商品であるため購入の約定日は翌営業日の6月7日に→そしてその約定結果が口座に反映されたのが6月8日、という流れでした。ちなみに、先にも書いたとおりこの約定日や受渡日の制約は基本的に特定口座や一般口座の投資信託と同じですので、例えば国内株式クラスや国内債券クラスの約定は締め切り時刻前に発注すれば当日ですし、受渡日は投資信託によって異なります(必ずしも3営業日後ではない)。投資信託を活用した資産運用で定期的にリバランスを実施されている方であればこれらの制約についてもよくご存じのことと思いますが、「基本的にBuy&Holdで一度も売却をしたことがない」という方や「リバランスは面倒なのですべてバランスファンドにお任せ」という方は将来の資産取り崩し時に売却代金がなかなか口座に反映されず(=引き出せず)イライラすることにもなりかねませんので、この約定日や受渡日の制約についてぜひ頭の片隅に留めておいてください。

確定拠出年金のスイッチングや投資信託の乗り換え時において、このように少なからずタイムラグが生じてしまうことで問題になるのは一時的に資産運用の連続性が失われてしまうことです。特定口座や一般口座の投資信託なら売却注文と購入注文を同時に出すことも可能ですが(ただし新規購入分の現金は必要)、確定拠出年金のスイッチングではそれができませんのでこの「一時的な空白時間」に何か経済的にインパクトの大きな出来事が起こってしまうと運用成績にも影響を及ぼしかねません。実は今回の私自身のスイッチングでもこの「問題」が発生していました。下記は今回売却したEXE-i 先進国株式ファンドの過去1ヵ月チャートです(いつものようにYahoo!ファイナンスからお借りしてきました)。左の○印が売却約定日の6月1日、そして右の○印が購入約定日の6月7日です。なお実際に購入したのはDCニッセイ外国株式インデックスですがタイミングを示す資料としてご覧ください。

EXE-i

ご覧のとおり購入約定日の前日である6月6日にチャートが大きな谷を描いていることが分かります。この時に何が起きたかと申しますと、皆さんご承知のとおり「米国の雇用統計ショック」でした。6月3日の金曜日に発表された米国の雇用統計で非農業部門雇用者数が事前の16万人増予想に対してわずか3万8千人の増加に止まるというサプライズにより、市場は株安+ドル安に大きく振れたのです。先進国株式クラスにとっては特に為替のドル安(相対的な円高)の影響が大きく、このような基準価額急落につながりました。この結果、今回のスイッチングは高く売って安く買い戻すという理想的なトレーディングになったわけです。さらに贅沢を言えばスイッチングの指図がもう1日早ければもっと高く売ってもっと安く買い戻せていたのですが、それを事前に狙ってできたわけではないのですから悔やむだけ無駄というものでしょう。また今回はたまたま「運が良かった」わけですが、当然のことながらそれは「運が悪かった」と表裏一体の関係にあるわけで、資産運用においてこのような「不確定要素」が介入する事態は可能な限り排除しなくてはなりません。もっとも確定拠出年金のような長期投資においては3営業日の差などほとんど誤差の範囲という考え方が現実的なのでしょう。しかし確定拠出年金のスイッチングや投資信託の乗り換え時においてはこのようなリスク(=本来の運用成績から上下にブレてしまう可能性という意味)が存在することもぜひ頭の片隅に留めておいてください。

最後に蛇足ながら付け加えますと、特定口座や一般口座を使った資産運用ではこの「タイムラグリスク」を回避できる方法があります。それはズバリ国内ETFを使うこと。ご承知のとおり国内ETFは個別株と同じ扱いですので、売却後即時にその売却代金を新規購入に振り向けることが可能なのです。実は国内ETFも多くの投資信託と同様に受渡日は3営業日後なのですが、新たに購入した国内ETFの代金支払いも3営業日後でよいため当日取引が可能になるのです。ですから資産運用の連続性を重視される方にとっては国内ETFが有力な選択肢になるかもしれません。ただし国内ETFでは金額買い付けはできませんので売却代金と購入代金をピッタリと一致させることが難しいことや売買の際に個別株と同じ取引手数料がかかる、1日の値動きが激しいこともある(売買タイミングにより結果が大きく変わる可能性がある)、銘柄によっては極端に流動性が低い(取引したくてもできない、適正な値付けがされないなどのリスクがある)など、投資信託と比較してデメリットも存在しますので、国内ETFをご検討の際には十分にご留意ください。

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