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専業主婦(主夫)は確定拠出年金に入ってはいけない?【訂正及び追記あり】

kage

2016/06/04 (Sat)

当ブログをご訪問いただいた投資に関心のある皆さんなら先刻ご承知のとおり、去る5月24日に衆議院本会議で改正確定拠出年金法が可決され、2017年1月より新たに専業主婦(主夫)、公務員、すでに企業年金に加入している会社員などの加入が可能になります。この決定を受けて早速確定拠出年金への加入を検討されている専業主婦(主夫)の方もたくさんおられるのではないでしょうか?しかしちょっと待ってください。確定拠出年金の仕組みをよく理解しないままで加入してしまうと、後々大きな不利益を被ってしまう可能性もありますので十分にご注意ください。

その不利益とは具体的に何を指すのか?を書く前にまず確定拠出年金のメリット(利点)を確認しておきましょう。以下は私自身が約9年前に書いた「イー・トレード証券(現・SBI証券)の確定拠出年金積立プラン」からの引用です。

・掛金は全額所得控除の対象となる
・確定拠出年金として運用している限りは譲渡、配当、利子などの課税が免除される
・年金と一時金のいずれの受け取り方法でも税制上の優遇措置の対象となる


ここに挙げた3つのメリットはいずれも文句なしに魅力的なものばかりです。しかしこれらの記述をよく読むと、ひとつの矛盾点を内包していることにお気付きになられるでしょう。その矛盾点とは、運用時の譲渡益(キャピタルゲイン)や利子・配当(インカムゲイン)は非課税なのに受け取り時には税制上の優遇措置の対象となる(=課税の対象となる)というものです。すなわち、「確定拠出年金=すべて非課税」という認識を持っていると、いざ受け取る時になって「こんなはずではなかった」と後悔することにもなりかねませんので十分にご注意ください。私自身が約1年半前に書いた「確定拠出年金の死角」でも指摘したとおり、確定拠出年金は運用成績が例えマイナスでも受け取り時には全額課税の対象となるのが現実なのですから。

このように書くと「確定拠出年金の仕組みは何と理不尽なのだ!」と憤慨される方が出てくるかも知れません。しかしそれは誤解です。なぜなら受け取り時に全額課税の対象となるのは拠出時(=積み立て時)の掛金が全額所得控除の対象となることとのペアで考える必要があるからです。すなわちこれは「拠出時の課税を猶予する代わりに受け取り時に改めて課税しますよ」ということで、いわば「課税の繰り延べ(=先送り)」なのです。これを単に税金をいつ払うかの違いに過ぎないと侮ってはいけません。投資における「課税の繰り延べ(=先送り)」が絶大な効果を生む可能性があることは、投資信託の分配金問題で繰り返し指摘されてきたことですのでご存じの方も多いのではないでしょうか?すなわち課税のタイミングが先に延びれば延びるほど支払うはずの税金相当額も運用に回すことが可能になり、「複利の効果」と同じ効果に期待できるというわけです。また一般的にバリバリ働いている現役世代の方がリタイア後より年収は高いはずですから、課税を猶予された拠出時より課税される年金受け取り時の方が所得税の累進税率が低くなるというメリットもありますしね(逆に言えばリタイア後もバリバリ働いて現役時代より年収が増えたようなケースでは「課税の繰り延べ(=先送り)」が逆効果になる可能性もあり得るということです)。

それではここで改めて本エントリーのタイトルに掲げた「専業主婦(主夫)は確定拠出年金に入ってはいけない?」に話題を移したいと思います。もしあなたが専業主婦(主夫)であり、一年を通してまったく所得のない状況であるのなら、私は確定拠出年金に入ることをお勧めしません。その理由は確定拠出年金の大きなメリット(利点)である「掛金は全額所得控除の対象となる」をまったく生かせないからです(所得がないため控除もできない)。それなのに掛け金は全額所得と見なされ、受け取り時には所得税の課税対象となってしまいますので。それではある程度所得のある専業主婦(主夫)の場合はどうでしょう?今の日本には配偶者の扶養家族から外れないように、あるいは年金保険料や健康保険料が自己負担にならないように、「○○万円の壁」を意識しながら働いておられる専業主婦(主夫)の方がたくさんおられますが、これらの方が確定拠出年金に加入すれば掛金分だけ壁の上限が上がることになります。(訂正:「配偶者の扶養家族から外れないように」はいわゆる103万円の壁を意識して書きましたが、扶養家族の判定には所得控除前の合計所得金額が用いられますので確定拠出年金に加入しても上限は変わりません。ただし所得税が発生するボーダーラインという意味での103万円の壁であれば変わります。また「あるいは年金保険料や健康保険料が自己負担にならないように」はいわゆる130万円の壁を意識して書きましたが、この場合の130万円も控除前の年収ですので確定拠出年金に加入しても上限は変わりません。以上、謹んでお詫びして訂正いたします。ご指摘いただいたtourisugariさん、ありがとうございました。)そしてその枠いっぱいまで働けば現在の手取り収入が増えますし、それと同時に自分の年金を積み立てられるという大きなメリットが享受できますので、確定拠出年金に加入する意義は大いにあると思います。

【追記】上記訂正内容で考えると、所得103万円超130万円未満の配偶者特別控除対象者には所得控除の恩恵があるのではないでしょうか?配偶者の控除額は専業主婦(主夫)の所得増に応じて減額されますがそれ以上に手取り収入が増えますし、その所得増が所得控除の範囲内であれば所得税もかかりません。

ただし現実的は所得のない専業主婦(主夫)が確定拠出年金に加入した場合でも、将来の実害は事実上ほとんどないと考えられます。それは確定拠出年金を一時金で受け取る場合は退職所得として扱われ、加入年数1年につき40万円の控除が認められるからです(80万円に満たない場合には80万円、21年目以降は1年につき70万円)。専業主婦(主夫)が属する国民年金第3号被保険者の拠出額上限は年間27.6万円ですので、運用がよほど上手く行って拠出金が1.45倍以上に増えない限り、一時金で受給すれば所得税も非課税で済むという計算になります。それでもこのケースは「損をしない」というだけで、確定拠出年金に加入して控除額を増やしてその分働こうと考えている専業主婦(主夫)と比べると明らかなメリットはありませんので、やはり私個人の意見としては積極的にお勧めはしません。

以上、本エントリーが確定拠出年金への加入を検討されている専業主婦(主夫)の皆さんにとって少しでも参考になれば幸いです。

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この記事へのコメント

kage

制度が変わったのでしょうか?

こんばんは。
いつも拝見させていただいております。

確かに、確定拠出年金は
運用結果によっては損失が出る可能性がある投資的な要素のお金を
受け取り時には、みなし控除となっている「退職所得」や「公的年金にかかる雑所得」として所得計算することが大きな矛盾点ですよね。

それを知らずにいると大変な目に会う可能性がありますね。
きちんと税制と社会保険制度を理解して、着地点を見極めながら
加入・運用をしていく必要がありますよね。

ただ、今後目減りしていく可能性が高い年金収入の代替策としての性格が強いですので、単純に課税時の損得勘定だけで判断するのは危うい可能性があるかと思います。

では、自助努力として何が考えられるのかということです。
触れられている通り、税の繰り延べ効果は大きいのではないでしょうか?

ところで、記載に疑問点があります。

制度が変わったのでしょうか?
教えてくださいね。

社会保険の被扶養者の認定の条件と所得税法上の扶養の条件を混同されていませんか?

「今の日本には配偶者の扶養家族から外れないように、あるいは国民年金保険料や国民健康保険料が自己負担にならないように」

社会保険の被扶養者は、基本的に収入要件で認定されるはずです。
確定拠出年金の掛け金が収入から控除できるような改正があったのでしょうか?

また、所得税上の被扶養者は、合計所得金額がその基準となるはずですので、確定拠出年金が該当となる「小規模企業共済等掛金控除」が増えても、変更となるのは「課税所得」であって、「合計所得金額」は変わらないはずです。

その2つを混同されていないですか?

毎回、すみません。

Posted at 22:54:19 2016/06/04 by tourisugari

この記事へのコメント

kage

tourisugariさん

コメントありがとうございます。

ご指摘を受けて改めて調べてみたところ、確かに混同しておりました。それにしても調べれば調べるほど日本の税制や社会保険制度は複雑怪奇だと痛感させられますね。そもそも自分で年金保険料を支払っていない第3号被保険者が確定拠出年金に加入できるのもおかしな話ですし。

Posted at 04:37:49 2016/06/05 by おやじダンサー

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kage


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