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「セゾン投信が示す運用会社の矜持」へのツッコミ

kage

2015/11/07 (Sat)

本エントリーは久しぶりとなるセゾン投信へのツッコミシリーズです。ちなみにタイトルにある「セゾン投信が示す運用会社の矜持」とは、お客さまへのメッセージ セゾン投信 NEWS LETTER 2015 11月号 vol.104(注意:リンク先はPDFファイルです)の巻頭を飾る「長期投資仲間へのメッセージ vol.104」の表題であり、著者は誰あろうセゾン投信株式会社 代表取締役社長 中野晴啓さんその人であります。なおタイトルにある耳慣れない単語「矜持(きょうじ)」の意味を辞書で調べてみると、「自分の能力を優れたものとして誇る気持ち。自負。プライド。」と書いてありました。ですから「矜持」という単語がしっくりとこない方は「自負」とか「プライド」に読み替えてみると理解しやすいかも知れませんね。というわけで本エントリーは上記リンク先に掲載されている「セゾン投信が示す運用会社の矜持」をお読みいただいていることを前提に話を進めさせていただきますので、まだの方はこの機会にぜひご一読くださいませ。

ツッコミを始める前にまず予防線を張っておきますが、私自身セゾン投信設立以来の受益者の端くれとして「セゾン投信が示す運用会社の矜持」に書かれた内容には大いに共感しております。しかしそこはハイリスク投機家特有の天の邪鬼な性格を持つ私のことですから、あえて異なる視点から「ツッコミ」を入れてみようというのが本エントリーの趣旨です。決してセゾン投信憎しの気持ちから出たいわれなき批判ではないことだけはあらかじめご理解いただければ幸いです。

それでは前置きはこれくらいにして「ツッコミ」を始めさせていただきたいと思います。まずは最初の見出し「信託報酬引き下げ実施」がターゲットです。ここには9月11日から私自身も毎月積み立て投資を継続中のセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの信託報酬引き下げを断行したことが誇らしげに書かれています。正直私はこの「誇らしげ」な表現に違和感を覚えました。何故なら今回の信託報酬引き下げの要因はあくまでも組み入れている米バンガード社のファンドのコストダウンであり、決してセゾン投信の努力の賜(たまもの)ではないからです。もちろん米バンガード社のコストダウン分をそのままセゾン投信が懐に入れて受益者には一切還元しないという選択肢もあったわけですから、そういう意味では「これこそがセゾン投信が示す運用会社の矜持だ」と強弁することも可能なのですが、少なくとも私だったらこのような表現はしなかっただろうなとは思いました。それでは私ならどのような表現にするか(あるいは受益者としてどのような表現なら納得できるか)と申しますと、「米バンガード社のファンドは順調にコストダウンが進んでいるのにセゾン投信側のコストダウンが一向に進まず誠に申し訳ない。お陰様で経営は何とか単年度黒字決算を出せるまでになったので今後運用残高が順調に増加すればいずれ必ずセゾン投信側のコストも引き下げることをお約束する」というような感じですかね。

あとここでは約10万人の受益者に対応するための業務コストやマイナンバー制度、ジュニアNISA制度に対応するためのシステム開発コストなどが利益圧迫要因として挙げられていますが、これについても私には異論があります。この件については過去のエントリーでもたびたび提言してきましたが、運用会社が最も注力すべきは運用そのものであり、顧客管理やシステム開発などのバックヤード業務ではもっと大胆に他社との協業も検討して欲しいと私は思っています。例えばいわゆる「直販系投信会社」が共同でシステム開発を行うとか、ネット証券を巻き込んでそのシステムに相乗りさせてもらうとか、日本郵便の親会社である日本郵政を通じてゆうちょ銀行のシステムを安く使わせてもらうとか、いろいろと方法はあるはずです。受益者の立場としてもひとつの口座で複数の「直販系投信」を保有できれば利便性は確実に向上するはずですから、中野社長にはぜひ既存の概念に囚われることなくもっと大胆な打開策をご検討いただきたいものです。

次の見出し「コストはマイナスのリターン」には投資信託のコストは運用成績を確実に引き下げる負の要素であることが書かれており、この内容には私自身もまったく異論はありませんのでスルーして次の見出し「コスト競争には参加せず」に進みます。皆さんご承知のとおりこのところ大手運用会社から次々に低コストのインデックスファンドが登場していますが、セゾン投信はこの低コスト競争に一切与するつもりはないとのこと。その理由はコストを大手並みに引き下げてしまうと「誠実なる運用も健全なる経営も損なうことになるから」だそうです。さらに中野社長は「この国で今流行の超低コストファンドは多勢の高コストファンドを負担している多くの投資家の犠牲の上に成り立っていると考えれば、大手間の低コスト競争は完全なダブルスタンダードだと言わざるを得ません」と大手の販売戦略を一刀両断に斬り捨てています。しかし私には中野社長が振りかざした刀は諸刃の剣のように見えます。何故なら現在の業界水準で考えれば、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの信託報酬0.69%±0.03%やセゾン資産形成の達人ファンドの信託報酬1.35%±0.2%はファンドがファンドを組み入れるファンド・オブ・ファンズであることを勘案してもお世辞にも低コストとは言えないからです。すなわちこれはセゾン投信の受益者が業界水準より高いコストを負担してくれるお陰で何とか単年度黒字決算を出せるまでになったとも考えられるのではないでしょうか?皆さんご承知のとおり運用の世界は高い志(こころざし)や崇高な理念だけで生き残れるような甘い世界ではありません。理由はどうあれ大手の超低コストファンドが個人投資家に支持されてセゾン投信のシェアを奪うことになっても、中野社長は「コスト競争には参加せず」という姿勢を貫くことができるのでしょうか?もしその姿勢が受益者の支持に甘えたものであったなら、残念ながらセゾン投信は厳しい運用の世界で淘汰されることになるでしょうね。

「コスト競争には参加せず」の最後に中野社長は「米国でバンガード社が長い時間をかけて実現してきた低コストとはあまりにも理念的次元が違うのです」と書いておられます。これは次の見出し「フィデューシャリーデューティーの実践」にもつながります。ちなみに「米国でバンガード社が長い時間をかけて実現してきた低コスト」とは、受益者が増えて運用残高も増加→スケールメリットによりコストダウンを実現→それによりさらに受益者が増え運用残高が増加、という好循環により達成されたものです。ですから私はセゾン投信が日本のバンガードを目指すのであればまずこの好循環に向けた第一歩を踏み出すべきだと考えています。その第一歩とは言うまでもなく受益者とのコミットメントでもあるセゾン投信側のコスト引き下げです。そしてセゾン投信のフィデューシャリー宣言にある投資信託運用業者として「お客さまのため」にのみ資産運用業務に従事し、専ら長期投資に努めることを米バンガード社が実現できている理由は、米バンガード社の株式がすべて自社のファンドに組み入れられており受益者と株主が完全に一致しているために他なりません。すなわちこの構造により受益者と株主の間に利益相反が起こらないのです。しかし現在のセゾン投信はご承知のとおりクレディ・セゾンと日本郵便という2大パトロンに支えられる構図になっており、立場上その意向を無視することはできません。今は自由にやらせてもらえるからといって、それが未来永劫続くという保証もないのです。例えば今般の日本郵政上場により、日本郵政の株主から「提携効果がハッキリとしないセゾン投信と日本郵便の関係は見直すべきだ」という声が強まれば日本郵政もそれを無視することはできないでしょう。もし仮に日本郵便が保有するセゾン投信の株式を意に沿わぬ相手に売却すればセゾン投信のフィデューシャリー宣言が実現困難になることがあるかも知れません。そういう意味で私は、セゾン投信のフィデューシャリー宣言の真価が問われるのはこれからだと思っております。そして何らかの理由によりフィデューシャリー宣言の実現の困難になった時は、中野社長自らが会社の幕を降ろすことが「セゾン投信が示す運用会社の矜持」であると私は考えております。

先にも書いたとおり私はセゾン投信設立以来の受益者であり、日本の個人投資家にとってセゾン投信という存在は必要不可欠であるという確信を持って応援を続けております。中には「運用会社を応援しても無意味だ」とのご意見もあろうかとは思いますが、私はセゾン投信が消えることは日本の個人投資家にとって大きな損失であると本気で考えています。しかしながらそんな私でもセゾン投信の意向を無条件で受け入れて賛同する「信者」になるつもりは毛頭ありません。ですからこれからも言いたいことは忌憚なく言わせていただきますので、悪しからずご了承いただきますようお願い申し上げます。

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この記事へのコメント

kage

あなたは、コストだけに目がいっていますね。
低信託報酬の投資信託でポートフォリオを組んで運用してきましたが、
暴落時は積立をストップしたり、急激な株価上昇と要らぬ情報により
2013年末までの軽減税率の件でつい利益確定してしまい、結局
信託報酬やらなんやら吹き飛んでいます。暴落時に積立をやめたり、
積立額の減額を1か月でもすればそれだけで信託報酬くらいは軽く吹き飛びます。また、個別のインデックスで新興国株式だけ急上昇3倍だ、5倍だ、これは
一時的なバブルだとなれば、売りかねません。
そういうことは、自分はないと言い張ったところで、セゾン投信の顧客すべてが
セゾン以外の低信託報酬インデックスファンドを全員同額積み立てようとしても
暴落時の積立ストップや暴騰時の売却損失、信託報酬を追っての不要な銘柄入れ替えなど、長期投資を応援する意味からいいことはありません。
要は、100人中2人がそういうことをしてしまえば、セゾンの勝ちなんです。
自分以外の人を含めて、すべての投資家の平均値としてセゾンの方針は有効です。ネットで積立ストップできにくいことは、玄人には本当にやさしい配慮です。自分の理論ではなく、他人がどうするかを含めて考えた上でセゾン投信が
どうなのかを示さないと意味がありません。
自分にとっては・・・という条件でのみ、成り立つ理論であり、
一般的には、一般の人がどう行動するかを含めて考えないといけません。
そのあたりを理解していない、理論家が多く、残念です。

Posted at 23:11:45 2015/11/10 by 現債券王

この記事へのコメント

kage

現債券王さん

コメントありがとうございます。

以前「セゾン投信に望むこと」に書いた一文をもってお返事に代えさせていただきます。

http://oyajidancer.blog22.fc2.com/blog-entry-1219.html

いつもいつもコストダウンばかり要求しているとまるで守銭奴のように思われるかも知れませんが、私に言わせればこれはセゾン投信と受益者の間の気持ちの問題です。中野社長は過去に何度も将来的な信託報酬の引き下げに言及しておられますので、私は勝手にこれをセゾン投信から受益者に向けたコミットメントであると理解しております。日本郵便との資本業務提携があっても創業時の理念はいささかも変わらないというのであれば、信託報酬の引き下げを断固実現する姿勢を明確に示して欲しいと私は思っております。

Posted at 02:41:45 2015/11/11 by おやじダンサー

この記事へのコメント

kage

お互いセゾン投信が中野社長が好きなようですね。
ニッセイが大幅な信託報酬の下げを行うことになりましたが
長期投資のセゾン投信を応援する意味でも
この信託報酬の差は気にかけては欲しい所ですね。
まあ、ざっとした計算ですが、0.69から0.55あたりまで
それ以上はちょっと厳しいのかなと思います。
せめて保有額か保有期間による減額をしていただくと励みにはなるんでしょうが。

Posted at 22:17:37 2015/11/13 by 現債券王

この記事へのコメント

kage

現債券王さん

再度のコメントありがとうございます。

私はセゾン投信も中野社長も応援しておりますが、残念ながら不利益を甘受してまで運命を共にすることはできません。投信ブロガー界で盛り上がるニッセイ祭りを見るにつけ、「低コスト競争に一切与せず」の姿勢は会社を危うくするのでは?と危惧しております

Posted at 11:51:12 2015/11/14 by おやじダンサー

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kage


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