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保険に関するさまざまな誤解

kage

2015/09/26 (Sat)

9月10日付のエントリー「高額療養費制度」の最後に私はガン保険に対する勘違いを懸念して下記のように書きました。

ガン患者の私としては「ガン保険だけは検討する価値あり」と言いたいのは山々なのですが、実はガン保険に入ることで「これでもう安心だ」と思ってしまうことを心配しているのです。勘違いしている人はおられないとは思いますが、ガン保険はあくまでガンになった時の出費に備えるものであり、ガンにかかるリスクを低減してくれるわけではないのですから。


繰り返しになりますが、ガン保険に加入してもガンにかかるリスクは下がりません。ですからガン保険に加入してもガンの予防や早期発見のための努力(食生活の見直しや適度な運動、定期的な健康診断受診など)は自己責任で継続する必要があるのです。もし「手厚いガン保険に加入したからもう対策は万全だ」と思って暴飲暴食・不規則な生活・運動不足などの不摂生を続けるのであれば、ガン保険に加入したことがむしろ逆効果になってしまうのではないか?と私は懸念しているのです。

もっとも「ガン保険に加入したからもう安心」というような事例は冷静に考えればすぐに誤解だと分かるので私の懸念は杞憂で終わる可能性が高いのですが、同じガン保険つながりで事例を挙げれば「先進医療」に対する誤解はかなり根深いものがあると感じています。この「先進医療」という単語はガン保険や医療保険のCMでよく耳にしますので聞き覚えのある方も多いと思いますが、皆さんはこの単語にどのようなイメージを持っておられますか?もし「最先端の優れた技術により高い効果が期待できる医療」と思っておられるとしたら、それは誤解です。実は「先進医療」とは「最先端の進んだ医療であるがゆえにまだ臨床データが少なく確実に効果があるとは立証されていない医療」のことなのです。あるいはすでに効果が立証されていてもその医療を受けられる施設が極めて少ない場合も「先進医療」扱いで保険適用外になります。これは施設が少ないがゆえに、その医療を受けられた患者と希望しても受けられなかった患者との間に著しい不公平が生じるためです。そしてこれらの「先進医療」も臨床データが増えて効果が立証されたり、医療を受けられる施設が増えて公平性が担保された段階で厚生労働省が改めて保険適用の可否を判断することになります。このように「先進医療」は必ずしも効果があるとは限らないことや、希望しても受けられない可能性がある点には留意が必要でしょう。

とはいえ多くのガン患者にとって「先進医療」が希望の光になっていることもまた事実でしょう。しかし実際に「先進医療」を受ける割合はかなり低いのではないか?と思われます。なぜなら全額自己負担となる「先進医療」の治療費を保障するための保険料が安いからです。基本的に営利を追求することを目的として経営される民間の保険会社が「先進医療」の保障だけ採算度外視のバーゲン価格で提供しているとは考えにくいため、保険料が安いのは実際に支払われる保険金が少ないからだと考えるのが妥当でしょう。つまり「先進医療」の保障は決して「有利」でも「お得」でもないということになりますね。ただし万が一の事態(それもかなり低い確率になるでしょうが)に備えて「安心」を得ることはできますので、最終的には支払う保険料が「安心」の対価として釣り合っているかどうか?の判断になると思います。

保険において実は「有利」でも「お得」でもない事例としては、「持病があっても加入できる医療保険」や「高齢者でも加入できる生命保険」なども挙げられます。これらの保険はリスクの高い人(持病のある人や高齢者など)を集めてリスクを分担してもらう仕組みになっていますので、決して「有利」でも「お得」でもありません。逆にリスクの低い人(健常者や若年層)が間違ってこれらの保険に入ってしまうと著しい不利益を被ることになりかねませんので注意が必要です。繰り返しになりますが民間の保険会社は慈善事業を行っているわけではなくあくまでも営利を追求するためにサービスを提供しているのですから、基本的に「有利」や「お得」は存在しないと考えておくべきでしょう。とはいえ相場の世界と同様に保険の世界にも小さな歪みは存在します。その歪みを利用することで多少「有利」になる可能性はあるでしょう。例えば健常者に比べてガンになる確率が高いと思われる人(以前の私のように不摂生を続けている人や喫煙者など)がガン保険に加入すれば、健常者と比べて保険金を受け取る確率は高まると思われます。もっともガンになって保険金をもらっても嬉しくないことだけは経験者として声を大にして申し上げておきます。

さらに医療保険に関しては根本的な部分に「公的医療保険は頼りないので不安。だから頼りになる民間医療保険に入っておけば安心だ。」という大きな誤解が横たわっているような気がしています。この「公的医療保険は頼りない」という先入観は明らかな誤解です。例えば私自身が大変お世話になった「高額療養費制度」は「充実し過ぎていて公的医療保険制度が維持できなくなるのでは?」と不安に思わせるほど手厚い保障になっています。先に述べた「先進医療」についても条件さえ整えば公的医療保険の適用対象となる可能性が高まります。さらに保険適用外で全額自己負担となった医療費は税制面で医療費控除の対象になるという救済策もあります。反対に民間医療保険の保険金や高額療養費制度の還付金は医療費控除の対象から差し引かなければなりませんのでご注意ください。このように民間の医療保険への加入については、税制も含めたトータルの収支で考える必要があるのです。

最後に医療保険を離れて地震保険の誤解について触れておきましょう。ご承知のとおり東日本大震災以降わが国では各地で地震が頻発し、加えて火山の噴火も頻発しているため、地震保険への注目度が増しています。この地震保険に対して皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?もし「地震保険は地震や噴火で被害を受けた住宅を再建するためのもの」とお考えであればそれは誤解です。念願のマイホームを手に入れて万が一に備えて地震保険にも加入した方なら先刻ご承知のこととは思いますが、地震保険は火災保険のオプション扱い(単独では加入できない)で保障額は最高でも火災保険の保障額(あるいは実際の評価額)の50%です。さらに建物は5,000万円、家財は1,000万円の上限がありますし、保険金の重複支払いは認められない(複数の地震保険に加入しても上限は評価額の50%となる)という特徴がありますので、現実には地震や噴火などの自然災害で被害を受けてしまうといくら地震保険に加入していても以前と同等の住宅を再建することは困難なのです。それでは地震保険は何を再建するためのものかと申しますと、それは「被災で崩壊した生活」です。すなわち被災者ががれきの中から新たな一歩を踏み出すための助けになるのが地震保険なのです。そういう意味では住宅や家財道具に対する保険というより生活保険に近いイメージなのかも知れませんね。このように地震保険もガン保険と同様に、決して「加入したからもう安心」ではない点に十分ご留意ください。

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