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年金運用は辛いよ

kage

2014/06/12 (Thu)

最近、投資関係の情報収集をしていると、やたらと「GPIF」という単語が目に止まるようになりました。当ブログをご訪問いただいた投資に関心の高い方なら先刻ご承知のとおり、「GPIF」とは年金積立金管理運用独立行政法人の略称です。この私たちの大切な年金を管理・運用するGPIFが日本株の組入比率を拡大する意向を示し、その背後に政府の思惑が見え隠れすることから、「年金を株価対策に使うな!」という声があちこちから上がっています。

年金を株価対策に使うべきでない、というご意見には私も100%賛同します。言うまでもなくGPIFの本分は年金の効率的な運用であり、株価の維持ではありません。そういう意味でGPIFの個別具体的な運用方針は政府の干渉を排除して決定されるべきだと私も考えます。とはいえ年金が厚生労働省の管轄下にあることは厳然たる事実ですので、現実的対応として霞ヶ関方面や永田町方面の顔色をうかがわなければならないのが年金運用の辛いところです。これは投資信託における大手金融機関と傘下の運用会社の関係に似ていますね。

それではここでGPIFの運用実態を確認しておきましょう。下記はGPIFのサイトからお借りしてきた昨年末時点の資産構成割合です。

GPIF001

ここにGPIFが公表している期待リターンを乗じて全体の期待リターンを算出してみましょう。

国内債券:構成割合55.22%×期待リターン3%=1.6566%
国内株式:構成割合17.22%×期待リターン4.8%=0.82656%
海外債券:構成割合10.60%×期待リターン3.2%=0.3392%
海外株式:構成割合15.18%×期待リターン5.0%=0.759%
短期資産:構成割合1.77%×期待リターン1.9%=0.03363%

トータル期待リターン:3.61499%

ちなみにGPIFの運用利回り目標は「賃金上昇率を1.7%ポイント上回る」です。それでは具体的にどの程度の賃金上昇率を想定しているのかというと、100年安心プランでは2.5%になっていました。この数字はあまりにも現実離れしているとの批判を浴びていますが、あえてそのまま使うとGPIFの運用利回り目標は2.5%+1.7%=4.2%となるわけです。2012年度はアベノミクス相場の追い風もあり10.23%という目覚ましい実績を残すことができましたが、「100年安心」のつじつまを合わせるために高い運用利回りを求められるのも年金運用の辛いところです。

現在の日本経済は長く続いたデフレの時代をようやく脱却してインフレの時代に転換しようとしています。さらに景気回復を背景に大手企業では久しぶりのベア(ベースアップ)が実施され、建設業やサービス業では人手不足が顕著になっているとの報道も連日目にします。こうなると賃金上昇率2.5%も現実離れではなくなるかも知れません。さらに資産運用の世界では「景気後退期には債券運用が有利で景気拡大期には株式運用が有利」とされていますので、現在の国内債券偏重の資産構成割合をインフレ対応型(=リスク資産を増やす)に組み替える必要が出てきます。しかし安易にリスク資産を増やそうとするとまだデフレ思考から抜け出せない国民から「私たちの大切な年金をリスクに晒すな!」と大ブーイングを浴びることになるのも年金運用の辛いところです。

日本経済が本当にインフレの時代に転換するのであれば、私たちの思考もインフレ対応に改める必要があります。デフレ時代は資産運用のチャンピオンだった国内債券や現金はインフレ時代においては欠点の方が目立つようになります。しかし安易に国内株式を増やそうとすると、冒頭で紹介したように「年金を株価対策に使うな!」との批判を浴びることになります。それではインフレ対応型の運用に移行するためには具体的にどのリスク資産を増やせば良いのでしょうか?海外債券や海外株式を増やすと「私たちの大切な年金を為替リスクに晒すな!」と言われそうですし。一つの案としては日銀と同じようにREITを買う方法があります。バブル経済崩壊やリーマンショックを経ても日本人には不動産神話が根強く残っていますので、REITへの投資は理解されやすいかも知れません。また別の案としては代替通貨として金(Gold)を買う方法もあります。金(Gold)は一般的にインフレに強い資産とされていますし、歴史上一度もその価値を失ったことがないという安全性が魅力です。ただし金(Gold)の最大の欠点は新たな価値を生まない(=利息が付かない)ことですので、中央銀行が信用力の裏付けとして保有するのならまだしも、年金の運用手段としては納得してもらえないかも知れませんね。

このようにGPIFがリスク資産を増やすことは容易ではありません。リスク資産を増やしてもし損失でも負おうものなら、マスコミや国民世論から激しい批判を浴びること請け合いです。一方で2012年のように目覚ましい成績(収益額:11兆2,222億円、収益率:10.23%)を残しても、「それは相場環境が良かっただけのことだから」と誰もほめてくれません。これも年金運用の辛いところですね。

そこで最後に私から、年金運用について少々突飛なご提案をさせていただきたいと思います。それは米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)のように「物言う株主」になることです。CalPERSは株主になったトヨタ自動車やNTTドコモなど日本の上場企業33社に対して社外取締役の増員を求める書簡を送ったと6月5日付の日本経済新聞が報じています。そこでGPIFも「物言う株主」となって株主資本を有効に活用していない企業(今風に言えば低ROE企業)をギリギリと締め上げるのです。この際ですから村上ファンドで有名な村上世彰氏をスカウトするのも効果的かも知れません。そうして村上氏を株主総会に送り込んでこう言わせるのです。「議長(多くの場合は社長が務めます)は株主を軽視しているのではありませんか?私たちはただの株主ではありませんよ。バックには全国民がいるのです。」

まあ、最後の方は半分冗談(=半分本気)ですが、少子高齢化の進行で事実上破綻していると揶揄される年金を復活させるためには、従来の常識に囚われない大胆な運用方針を打ち出すことも必要でしょう。それと同時に私たち国民もインフレ時代には積極的にリスクを取りに行く必要があることやリターンは取ったリスクの報酬であることなどを理解した上で、年金運用を監視する必要があるのではないかと考える次第です。

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