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裏付けのない通貨

kage

2014/03/01 (Sat)

今回のタイトルはもちろん最近何かと話題のビットコインを念頭に置いたものです。現在報道されている出来事の本質はビットコイン自体の問題ではなく、取引所であるマウントゴックスの問題ではあるのですが、「そもそもお金とは何か?」を思い起こす良い機会になったのではないかと思います。そこで当ブログでも改めて「そもそもお金とは何か?」について、思い付くままにつらつらと書き連ねてみたいと考えた次第です。

一般的に通貨の裏付けとなるのは発行元である中央銀行や政府の信用力です。私たちが福沢諭吉の肖像が書かれた日本銀行券という名の紙切れに1万円の価値があると信じているのは、黒田日銀総裁がポンと胸を叩いて「この1万円紙幣には1万円の価値があることを私が保証します。信頼してください。」と言うのを素直に受け入れているからです。同様に私たちが「500」と大きく書かれたニッケル黄銅の金属片に500円の価値があると信じているのは、麻生財務大臣がポンと胸を叩いて「この500円硬貨には500円の価値があることを私が保証します。信頼してください。」と言うのを素直に受け入れているからです。つまり日本円という通貨の裏付けは私たちの日本銀行や日本政府に対する信頼であり、その信頼が失われた時が「金の切れ目が縁の切れ目」ならぬ「信頼の切れ目が金の切れ目」となるわけです。

実際に通貨に対する信頼が失われた事例は古今東西数多く存在しますが、直近ではアフリカのジンバブエが有名です。ジンバブエの通貨ジンバブエ・ドルはハイパーインフレにより紙くず同然となりました。世界史の教科書で有名な第一次世界大戦後のドイツでも同様の事態となりました。また紙くず同然とまではならないまでも、終戦直後の日本でも急激なインフレにより日本円の価値は急速に失われました。現在進行形の事例でいえば、混乱が続くウクライナでは銀行に預金を引き出そうとする顧客が殺到して取り付け騒ぎとなり、一日の引き出し限度額に規制がかかっています。このような古今東西の事例から私たちが学ぶべきは、通貨の裏付け(=発行元の信用力)は絶対ではなく永遠でもないという現実です。もし仮に日本のアベノミクス政策が失敗に終わり財政破綻の危機に直面するような事態となれば、日本円に対する信頼も失われるでしょう。さらに影響は日本国内だけに止まりません。日本は世界第3位の米国債保有国ですのでもし日本が財政破綻すれば米国もただでは済みません。もちろん米国債保有世界第2位の中国も巻き込むことになり、日本を震源地とした第2次世界大恐慌となる可能性もあると私は考えます。基軸通貨である米ドルの信用が失われた世界はいったいどのようなものになるのでしょうか?ジョン・レノンの名曲「イマジン」風に表現するなら「Imagine there's no dollar」ですが、皆さんは想像できますか?

通貨の価値が揺らぐと俄然注目を集めるのが代替通貨としての金(Gold)です。しかしこの金(Gold)も実はビットコインと同様に「裏付けのない通貨」なのです。この件については以前こちらのエントリーで触れていますので、ちょっと長いですが該当部分を以下に再掲させていただきます。

それにしても史上最高値更新を続ける金価格を見て改めて感じるのが「モノの価値とはいったい何だろう?」という疑問です。金(Gold)の価値を形成する第一はおそらく希少価値でしょう(年間の産出量が限られておりしかも少ない)。次に挙げられるのが貴金属(宝飾品)としての価値です。金(Gold)の輝きは古来から世の女性たちを虜にして来ましたが新興国の発展や原油価格の高騰を背景に中国、インド、中東などで宝飾品としての金の需要が増えているそうです。これらの国や地域で金が好まれる理由は単に宝飾品としての魅力だけではなく、長い歴史の中で異民族の侵略や支配を受けてきたことで身に付け持ち出せる資産として金が選ばれたという背景もあるようです。さらに金には工業用金属としての価値もあります。日本が製造するハイテク製品に金は必要不可欠です。実際に皆さんが手にしておられる携帯電話の金含有率は一級品の金鉱石でさえ遠く及ばないほどの高さであるといわれています。今や日本だけでなく世界中でハイテク製品が製造されておりその数は日々増えていますので金の需要も日々拡大していることになります。これに加えて金には紀元前の時代から貨幣として使われたという歴史的背景があり、先の未曾有の金融危機以来世界的に広まっている通貨に対する不安の受け皿となり投資資金の逃避先に選ばれているという現実があります。つまり投資対象、あるいは現物資産としての価値です。このようなさまざまな理由から供給量が限られているのに需要が増えているため金価値が上がっているわけです。つまりモノの価値の計り方にはいろいろな方法があっても、最終的には需要と供給がバランスするところで価格が決まるというのが経済学の原則といえるわけです。

しかしこうして改めて金の価値の源泉を考えてみて一番不思議に思うのが最後の「投資対象、あるいは現物資産としての価値」です。確かに金は人類の長い歴史の中で貨幣として流通しており有史以来一度もその価値が失われたことはありません。しかし金本位制は過去のものとなり、どの国の政府も中央銀行も国際通貨基金(IMF)でさえも金の価値を保証してくれているわけではありません。つまりいつでもどこでも金を現地通貨やお米やパンと交換してもらえるという保証はどこにもないわけです。しかし私たちの多くは何の疑いもなく金に代替通貨としての価値を認めている。これは「誰もが価値があると信じているから価値がある」の典型ではないでしょうか?先週あるテレビ番組で池上彰さんが「日本の一万円札の製造原価は27円である」と紹介していました。つまり福沢諭吉の肖像のある日本銀行券という名の紙切れの本当の価値は27円相当ということです。それを日本政府や日本銀行が保証人となって1万円の価値があるものとして市中に流通させている、というのが現実の姿です。しかし今世界中でこの通貨の信用が揺らぎ始めています。今こそ私たちは改めて「モノの価値とはいったい何だろう?」と考えてみるべき時なのかも知れませんね。


仮想通貨のビットコインと異なり金(Gold)は現物ですので鉱物としての価値は厳然として存在します。また有史以来その黄金の輝きで人々を魅了してきた貴金属としての価値も認めないわけにはいきません。しかし代替通貨としての価値、あるいは投資商品としての価値の裏付けはいったいどこにあるのでしょうか?「かつて世界中で通貨として広く流通していたから」や「有史以来一度もその価値が失われたことがないから」は「過去は未来を保証しない」という原理・原則に従えばまったく裏付けにはなりません。かなり突飛な仮定ですが、もし以前「超短編小説・夢の錬金術」で描いたような低コストの錬金術が核融合の研究過程で実用化されたら、あるいは海水中に含まれる金を低コストで回収できる技術が実用化されたら、または高純度の金鉱石を含んだ流星群がシベリアあたりに大量に降り注ぎ現代のゴールドラッシュが起こったら、金(Gold)の価値は激変することでしょう。つまり金(Gold)の価値でさえも絶対ではなく永遠でもないということですね。

代替通貨としての金(Gold)の信用力は中央銀行や政府の裏付けがないにも関わらず決して低くありません。金(Gold)に対する信用はもはや信奉に近く、そういう意味では宗教に近い感覚なのかも知れませんね(文字通りの拝金教?)。もし何らかの理由で人々がその呪縛から解き放たれたとしたら、いったいどのような世界になるのでしょうか?ジョン・レノンの名曲「イマジン」風に表現するなら「Imagine there's no Gold」ですが、皆さんは想像できますか?

再掲したエントリーで私は池上彰さんの解説を引用していますが、池上さんが別の番組で「お金とは共同幻想である」と解説しておられたことが強く印象に残っています。つまりこれは再掲したエントリーの中にも書いた「誰もが価値があると信じているから価値がある」ということあり、「価値があると信じる=共同幻想」だと池上さんは指摘しておられるのです。例えばアフリカや南米の奥地に行って日本円を見たことも聞いたこともない人に1万円札を見せて「これは世界的にも認められた有名なお金です。これで食料を売ってください。」と言っても拒否されるでしょう。つまり信じていない人にとっては本物の1万円札も紙くず同然なのです。このことから私がたどり着いた結論は、その通貨に価値があることをいかにもっともらしく説明して人々に信じ込ませることができるか(=共同幻想に陥れることができるか)がその通貨の裏付け(=信用力)になるということです。つまり中央銀行や政府の保証も共同幻想を補完するひとつの要因に過ぎず、通貨の信用力とは文字通りどれだけその通貨を信用することができるかで決まるということですね。

以上、今回はビットコインのニュースをきっかけに「お金とは何か?」について改めて考えてみました。本エントリーの最後は当ブログで過去に何度か提起してきた質問で締め括りたいと思います。もし何らかの理由であなたが100年後の子孫に資産を残さなければならなくなったら、何を選びますか?

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