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超短編小説・来るべき未来

kage

2014/01/05 (Sun)

遅ればせながら本エントリーが今年初更新となります。本年も引き続きハイリスク投機家の戯れ言にお付き合いいただければ幸いです。

20XX年、ある研究所で長年の努力が結実してついに画期的な送電ケーブルが完成した。このケーブルは地球の赤道を一周する距離で送電しても途中の電力ロスはほとんどゼロに近いという超高性能と、従来の送電ケーブルと同等以下の製造コストという両立が極めて困難なメリットを実現した夢の製品であった。この画期的な技術が海外に流出することを恐れた日本政府は迅速に行動した。巨額の官民ファンドを立ち上げてこの技術を買い取り、直ちに実用化に向けて量産体制を構築し始めたのである。この技術は画期的であるがゆえに将来的にも安定的な収益が見込めるとして年金の資金も多く投入され、まさに日本の命運を賭けた一大プロジェクトの様相を呈していった。

この画期的な技術の完成を受けて電力会社も迅速に行動せざるを得なくなった。すでにこの時、いわゆる「発送電の分離」は完了しており、送電会社は純粋に費用対効果の観点から可及的速やかに新開発の超伝導送電ケーブルの導入を進める方針を固め、発電会社が保有する従来型の発電所の存在意義は急速に失われることになった。送電ロスがないケーブルがあれば発電所はどこにあっても良いわけで、加えて必ずしも大規模である必要もなくなった。低コストの小規模発電所をあちこちに作った方が結局のところ安上がりなるのである。その結果多くの発電会社が注目したのが「海」だった。海洋国家・日本にとって海こそが最大の資源であることは誰もが認識していたが、それまでエネルギー源としての活用はほとんど進んでいなかった。ここで日本の技術が相乗効果を生むことになる。日本の近海を流れる海流を利用した「潮流発電」や沿岸の波を利用した「波力発電」、さらには「洋上風力発電」などが一気に発電の主役に躍り出てきたのである。かつてコンピューターが大規模なホスト型から一人一台のパーソナル型に進化したように、日本の発電も大規模発電所型から無数の小規模発電を集約する形に一気に変革を遂げたのであった。

その後も徐々に海洋発電の能力は向上を続け、ついに日本の電力需要のすべてをまかなうことが可能になった。そうなると今度は余剰電力が問題になる。そこで各発電会社は余剰電力を使って海水の電気分解事業を始めることにした。つまり海水を電気分解して水素を取り出すのである。そして取り出した水素は普及を始めている燃料電池車の燃料に使うのだ。これにより水素が安定的かつ大量に供給されることになり、燃料電池車の普及は急加速することになった。燃料電池車はいわば水素を燃料とした小型発電所でもあるため、燃料電池車を保有する家庭は積極的に自家発電を利用するようになり、光熱費の削減が消費を押し上げる思わぬ効果も生まれた。

しかし自家発電比率の向上はさらなる余剰電力を生むというマイナスの効果も生んだ。そこで政府は余剰電力を海外に販売する道を模索し始めた。欧州では一般的は電力の国外販売だが日本では前例がないためテストケースとしてまず台湾への売電を始めた。その結果、日本からクリーンで安価な電力が供給されることになった台湾ではそれまで中国本土に進出していた工場を閉鎖して台湾に戻ってくる動きが一気に加速した。さすがにこれには中国政府も困惑したようで、日本政府に対して正式に技術援助の要請を行うこととなった。砂漠の地域に大規模な太陽光発電施設を建設するために協力して欲しいというのだ。かくしてひとつの画期的な技術が年金を潤し、家計を助け、ある意味で日本の有力な外交カードともなり、やがて世界の人々の幸福を実現していくことになるのであった。

【後書き】

新年一発目のエントリーということで、素人考えの初夢物語を書いてみました。超短編小説シリーズは「超短編小説・完璧な相場予測プログラム」、「超短編小説・夢の錬金術」、「超短編小説・理想的な商品」に続いて4作目ですが、いつも素人考えの荒唐無稽な内容ですので今回も笑ってお許しいただければ幸いです。今回の作品で私が言いたかったことは「ひとつの画期的な発明の波及効果で未来は大きく変わる」ということです。蒸気機関然り、電気然り、コンピューター然り、インターネット然りです。新年を迎えて改めて私たちの未来がどうなるかは私たち一人ひとりの決断と行動に委ねられているということを肝に銘じたいものです(自戒を込めて)。

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