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超短編小説・理想的な商品

kage

2013/09/28 (Sat)

20XX年、ある研究所で長年の努力が結実してついに理想的な商品が完成した。 外見はサイコロ状の立方体で継ぎ目はなく、表面は滑らかで光の反射具合により七色に輝いて見えた。一見するとただの置物のようにしか思えないが、実はこの商品には隠された秘密があった。それは内蔵された装置がある種の超音波や電磁波を発して人間の思考をコントロールできること。その効果によりこの商品を手に取った人は皆、何の変哲もない立方体に限りない魅力を感じるのである。所長は古い名作SF映画にちなんでこの商品に「モノリス」という名を付けた。

所長は早速マスコミ各社を集めて発表会を開催した。しかし内蔵された装置のことはあえて伏せて、一見立方体に見えるが実は微妙に調和を崩していることや見る角度によって色や輝き方が変わることに人は自然と魅力を感じるのだともっともらしい説明をした。質疑応答の時間になるとある記者が会場全体に漂う雰囲気を代弁した。「モノリスの美しさは一見して分かりますがそれだけで理想的な商品と言えるのでしょうか?」この疑問に対して所長は自信満々の様子で答えた。「あちらにご用意したサンプルをお手に取ってみていただければご理解いただけるはずです。」

実際その効果はてきめんだった。サンプルを手にした記者たちはたちまちモノリスに魅了された。記者たちは勢い余って所長を問い詰めた。「いつ発売されるのですか!」、「どこに行けば買えるのですか!」と。自然とマスコミに掲載されるモノリス紹介の文面も極めて好意的になる。記事を読んだだけでは半信半疑だった消費者も実際に店頭でモノリスに触れてみるとたちまち魅了されてしまいどうしても買わずにはいられなくなるのであった。かくしてモノリスは発売直後から世界中で大ヒット商品となったのである。

とはいえこのモノリスにも弱点はあった。内蔵された電池が切れると魅力を感じさせる効果も失われるのである。しかしマーケティング面ではそれが逆に利点となった。微妙に形や輝き方を変えた商品を新型として発売することで継続的な買い換え需要が生まれたのである。次第に世界経済はモノリスを中心に回ることになった。モノリスを購入するために人々は一生懸命に働き、モノリスが売れ続けることで製造や販売などの関連産業も潤い、経済成長の好循環が生まれた。こうして人類は史上最高の好景気を迎えることになった。何も生み出さない置物によって。

【後書き】

超短編小説・完璧な相場予測プログラム」、「超短編小説・夢の錬金術」に続く超短編小説シリーズを久しぶりに書いてみました。今回は過去2作に比べて少々長くなってしまったので「超短編」とは呼べないかも知れませんが。きっかけはテレビの大ヒットドラマでした。言うまでもなくそれは「半沢直樹」であり「あまちゃん」のことなのですが、これらのドラマの人気が永遠に続けば経済への波及効果も凄いことになるだろうなという妄想が原点です。ここでちょっとこの小説の「モノリス」を「AKB48」に置き換えて考えてみてください。そうなると所長はもちろん秋元康総合プロデューサーに置き換わるわけです。現実にAKB48関連のプロジェクトは世界展開されており、経済への波及効果もかなりのインパクトがあると想像できます。選抜総選挙の投票券を得る目的でファンが何枚ものCDを買う行為には批判も多いですが、その経済効果は単に芸能プロダクションや音楽会社だけに止まらずCDプレス機製造会社や投票券印刷会社にまで波及していることもまた事実です。もしAKB関連プロジェクト人気が世界的に拡大して長く継続するのであれば、その波及効果で多くの人が豊かになれるでしょう。そう考えると私たちの周辺にはさまざまなモノリスの種が眠っているような気がしてきませんか?

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