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インフレ期待に働きかける

kage

2013/01/30 (Wed)

安倍政権の経済政策(通称:アベノミクス)は三本の矢で構成されています。すなわち、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の三本です。その中で今回注目したいのは一本目の矢である「大胆な金融政策」です。ご承知のとおり安倍総理は日銀に圧力をかけて2%のインフレ目標を掲げさせることに成功しました。その結果、日銀は2%のインフレ目標を達成するまでは大胆な金融緩和を継続せざるを得なくなりました。ここで注意しておきたいのは、政府と日銀の目的は2%のインフレ目標達成ではなく、私たちのインフレ期待に働きかけることである点です。

この「インフレ期待に働きかける」という表現はアベノミクスの解説でよく耳にするのですが、「期待」という単語を素直に受け止めると何となく妙な感じになってしまいますよね。「いよいよインフレ到来だ!ワクワクする!!」みたいに。もちろん本来の意味はそうではなく、ザックリと意訳すると「これからインフレ状態が続くのではないかという空気(雰囲気)を醸成する」という状況を指すものと私は理解しています。

現実にはアベノミクスの三本の矢はまだ放たれていません。しかしこんな矢を用意しているのだと話しただけで株式市場や為替市場は「インフレ期待に働きかけられまくり」の状態になりました。すなわち、今の市場を支配している「これから株や不動産は値上がりするだろう」という空気(雰囲気)こそが「インフレ期待に働きかける」の好例であるといえるでしょう。

それでは「インフレ期待に働きかける」と実体経済にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか?そのカラクリについては以前書いたことがあったはずだと思って探してみたところ、3年以上前に書いたこちらのエントリーで触れていました。

例えば今、私がトイレットペーパーを買おうと思っているとしましょう。現在のようにデフレ下で店舗間の価格競争も激しい状況においては自宅のストックが切れるギリギリまで待って必要最小限の数だけ買うのが賢い方法といえます。反対にこれがインフレ下であれば一刻でも早く将来の消費分も含めてなるべく多くの数を買うのが賢い方法となります。この消費動向は企業でも同じでトイレットペーパーを原材料に置き換えて考えれば仕入れ担当者はおそらく同じ行動を取るはずです。インフレとデフレはどちらも経済にとっては良くない状況ですが、このように消費動向に限ってみればデフレでは必要最小限の消費しか起きないのに対してインフレでは将来の分を前倒しした消費が起きるため結果的にデフレ下では経済規模が縮小し、インフレ下では経済規模が拡大します。ただしインフレも第2次石油ショックがもたらした狂乱物価のように暴走するとモノの値段が上がりすぎて消費拡大を阻害することになります。このため投資にとって理想的なのは緩やかなインフレであるとされています。


日本経済を苦しめた「失われた20年」とも表現される長く続くデフレで私たちの消費心理もすっかりデフレ対応の「デフレマインド」が刷り込まれてしまいました。アベノミクスはそこに第一の矢を射て、「インフレ期待に働きかける」ことにより私たちの消費心理を「インフレマインド」に変えることを目指しているのです。「景気の気は気分の気」という言葉があるように、景気回復のためにはまず私たち消費者のマインド変化が重要であるということですね。

先にも述べたとおり三本の矢はまだ放たれておらず、日本経済もまだデフレから脱却できたわけではありません。しかし「インフレ期待に働きかけられまくり」の状態になった為替市場では野田前総理が党首討論で衆議院解散に言及した昨年の11月14日以来、ほぼ一貫して円安が進行しています。下記はSBI証券からお借りしてきたドル円の3ヵ月チャートです。

ドル円3ヵ月チャート

このチャートを見ながらちょっと頭の体操をしてみましょう。あなたは今年のゴールデンウィークに家族でハワイ旅行に行く計画を立てています。その資金は昨年の冬のボーナスで手当済みです。さて円からドルへの両替はいつすべきでしょうか?

ある意味これも「インフレ期待に働きかける」の一例であるといえます。「どうも5月までは円安傾向が続きそうだぞ」と考えるのであれば旅行で使うお金は一刻も早くドルに両替しておくべきです。このように「まだ円安はしばらく続きそうだ」と考える人が増えれば増えるほど、実際に円からドルへの両替(=円売りドル買い)をする人も増えます。経済にとってお金は血液ですから、こうして実際にお金の流動性を高める行動を前倒しで取る人が増えることが経済の活性化につながるということですね。

ちなみに先ほどの「さて円からドルへの両替はいつすべきでしょうか?」の解答ですが、当ブログをご訪問いただいた投資に関心の高い方ならすぐにお分かりのとおり、正解はありません。なぜなら将来のドル円動向を正確に予想することは誰にもできないからです。しかし投資に関心があれば、いろいろな解答例を想定することは可能です。

・ドル円相場は明らかに円安トレンドに転換している。今すぐ両替すべし。
・今の円安は明らかに行き過ぎ。大きな調整を待って両替すべし。
・将来のことは誰にも分からない。タイミングについて悩むだけ無駄。今すぐ両替すべし。
・将来のことは誰にも分からない。タイミングについて悩むだけ無駄。運を天に任せて旅行直前に両替すべし。
・将来のドル円動向は誰にも予想できない。リスク分散のために何度かに分けて両替すべし。

仲間内で投資に関する話題はどうも話しにくいとお感じの方でもこのような事例であれば話しやすいのではないかとふと思いました。周囲に投資に対する理解を広めたいとお考えの方はぜひこの事例を活用してみてください。

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